私達は古代人の知恵と優れた先賢の言葉からも正しく、新しい現代的な
意義を学びとらなければならない時期に来ている。
かのシュバイツァー博士は “人間は将来を見通しそれに対処する能力
をもはや失ってしまった。そして自然を破壊して人類は破滅する他はない
だろう”と警告している。
現代の文明禍は徐々に、慢性的に人間没落への道に拍車をかけ、がん・
脳卒中・心臓病・精神障害者等はいよいよ増加している。だから、私たち
は、手放しで現代科学技術を謳歌したり、産業の工業化を一方的に進め
るほど生命について無知、おひとよしであってはならない。今こそ、これに
賢明に対処しなければならない時期に来ている。
事実その火の手は、世界各地から起こりかけている。行政府や現代医
学の医者に頼ってばかりいたのでは自分自身の健康や生命を守るわけ
にはいかない現状である。
大気は汚染し、水質は汚毒され、町には騒音、排気ガス、地盤沈下、食
料品には人工着色料、有害添加物を多量に混入させ、農村は毒ガス戦
場に変わり、農産物のほとんどすべては農薬に汚染されている。
化学肥料の大量投与による「土」は、すでにその自浄作用を失い私たち
を取り巻く外的自然環境の主要素である「空気」「土」「水」、それに「太陽」
までもオゾン層の破壊による紫外線の増大を生起し、もはや自然と人、社
会と人、人と人の「歯車」はあきらかに狂ってきている。
しかし意外に大衆は、その「狂った歯車」に気がつかないでいる。時すで
に遅しの感がある。
日本人の薬好きは世界的にも有名であり、製薬会社の利潤第一主義と
医師の医薬偏重主義から、薬害、医源病の犠牲者がどれほど多いことか。
おまけに核兵器、原子力潜水艦、原子力発電所からの恐るべき廃棄物
(放射能汚染)コンピューターの画面、テレビ画面からの日常的な放射能
被爆、天も地も水も家電品からも目には見えない放射能で我々の肉体は
刻々と汚染度を高めている。
それに追い討ちをかけるように、現代医学はレントゲン・放射線療法・M
RI・CTスキャン等の検査機器からの汚染、判で押したような薬とメスによ
る対処療法に終始している。東洋医学の全体性、心身一如、予防医学の
長所に学ぼうともせず。
これでは国民大衆は浮かばれない。健康・生命こそすべてに優先すべ
きことであり、幸福の基盤である。そして岐路に立つ現代物質文明に対し、
我々は勇気と自信と誇りをもって東洋の光を高くかかげ、21世紀の人類の
健康と生命に対して正しい道を示唆する使命があるといえる。
この「狂った歯車」を修正するのは我々東洋人に課せられた任務である
と確信する。日本伝承医学がその一助になれば幸いである。
1993.7.21