次のページへ

  「知恵と学問」



 古代文明の栄えた地域は、地球上でみるとそのほとんどが熱帯地域に
属している。
 世界の四大文明は、エジプトのメソポタミア文明、中東のチグリス・ユー
フラテス文明、インドのインダス文明、中国の黄河文明であるが、その共
通性は全て大河流域であり、概ね熱帯性気候の地域である。そこには、
肥沃な土壌がある。
 何故、それらが文明の発生と関わりがあるかというと、肥沃な土と熱帯
特有の雨が多いという条件、つまり土と水と太陽という条件が揃っていて
全ての成長が早いからである(米に関しても二毛作が可能となる)。
 
 人間が生活していく上で、最も基本的な食糧が豊富に取れるということ
は、文明の発生には欠かせない条件となる。それとは逆に、熱帯特有の
高温と高湿度は、その食物をすぐに腐敗させる条件にもなる。
そこで生きるために大切な食物を腐らせないためにはどうしたら良いのか
という問題が起こってくる。そこに科学する心の芽生えがあり、「知恵」が
生まれるのである。
 つまり、「知恵」とは、人間が生きていくために考えた思惟であり、実生
活と密着した学問とも呼べるのである。
 こう考えると、古代人が残してくれた様々な分野の「知恵」は、まさに科
学的所産といえるのである。その一分野として「生死」に関わる医学の分
野においても、その「知恵」は存分に発揮されているのである。

 しかるに、現代科学者、及び医学者は古代人の医学(インドのアーユル
ヴェーダ、中国の漢方医学、エジプトの手技療法…カイロプラクティックの
原型、日本の伝承医学・・・)に対して、学問レベルからみるとそれは低レ
ベルであり、未科学、非科学というレッテルを貼って一笑にふすという態
度はまさに反省をしなければならない重大な問題を含んでいるのである。