脊柱のS字カーブについて



 人体の脊柱は直線的ではなく、S字状を呈しています。何故S字状かと
いいますと、縦長な構造体をした人体の重さが一点に集中しないように、
分散する役割を担っているからです。
 例えば現代の高層ビルが、地震による揺れで倒れないようにするため
に、ビル全体が波状に揺れるように設計されているのと同じで、S字状を
呈することで力を分散させているのです。
 これを脊柱の生理的カーブと呼んでいます。二足直立を果たした人体は、
理想的な脊柱のカーブを形成して、重力に順応するように作られているの
です。


  故にこのS字状をした生理的カーブが正常を逸脱しますと力の分散に
ひずみが生じ、一点に応力集中が起こることになってきます。正常からの
逸脱の形は、二種類あり、生理的カーブをより強くするものと、生理的カー
ブが減少して、直線的になるものとがあります。
 生理的カーブが強くなるタイプとは、わかりやすい例として、平坦なところ
に、仰向けに寝たとき、床面に腰部がつかず、トンネル状に浮いた状態に
なります。このタイプの人は、仰向けに寝ると腰に違和感が生じたり、尾骨
が当たって痛みを感じたりして、仰臥位で寝ることが出来にくいのです。
特に女性に多く見られます。
  生理的カーブが直線的になるタイプとは、一見胸をはって姿勢が良いよ
うに見られがちです。いわゆる軍隊式の「キヲツケ」の姿勢です。見栄えは
いいのですが、これも生理的カーブを逸脱した形となります。
 どちらも異常な姿勢であり、腰部や頸部に過度の力の集中が起こり、長
期間に及ぶと骨に変形や椎間板の脱出(ヘルニア)を引き起こす要因となっ
ていきます。


 脊柱のカーブを規定しているのは、その土台となっている骨盤の角度に
なります。骨盤は二つの腸骨と一個の仙骨で構成されており、脊柱は仙
骨の上に乗っている存在です。
  故に土台となる仙骨の角度(腰椎仙骨角度=腰仙角)が脊柱の全体の
カーブを規定しているのです。この仙骨面の角度を腰仙角と呼んでいます。
腰仙角は正常が30度くらいが理想で、これより角度が増せば、脊柱の生
理的カーブは強くなり、浅くなれば直線的になるのです。(次頁図参照)
  腰仙角というのは、部分名称で、これは骨盤全体の傾斜を表していま
す。骨盤全体が前傾すれば腰仙角は増え、後傾すれば腰仙角は減少し
ます。つまり脊柱全体のカーブは、柱の土台である骨盤の前傾、後傾が
規定しているのです。

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