歪みの本体
縦長な構造体であります我々の人体は、まさに積木を高く積み上げた
状態と構造的に同じです。積木の面をずらしながら後方に積み上げてい
くと、ある段階で倒れます。これを倒さないようにするには上部の積木を
逆方向の前方に積みかえなければ重力線上でバランスを保てません。
つまり、下部の積木の積み方次第で上部の積木の積み方は規定されて
きます。下部構造が上部構造を規定するという法則が適用されることに
なるのです。
人体に置き換えて考えてみますと、現代人の姿勢は骨盤が前方に巻
き込み(前傾、ヒップアップ型)腰部が後方にそっくり返った体形の人が多
くなってきました。特に女性にこの体型が多くなっています。
このタイプの人は腰椎の前湾カーブが大きく、腰の部分で後方にそっく
り返った姿形を呈しています。このまま脊椎が後方に反ってしまえば後ろ
に転倒してしまいますから、バランスをとるために上部の頸椎、肩、頭を
前方に凸出することで姿勢のバランスを保つことを余儀なくされます。
首や頭が体幹部より前方に凸出している体型の人に多く見うけられる
姿勢です。まさに前述の積木の修正の形そのままが人体に置き換えら
れています。
日々の臨床の中で、このタイプの人に姿勢の特徴を告げると異口同音
にそれでは、首を前方に凸出しないように注意しますといって、首を無理
やり体幹部に乗せようと試みます。現代人の思考法の特徴を端的にあら
わす例なのです。
腰のそっくり返りという下部構造の歪みを修正するために、必然的に起
こっている必要な対応であるというような発想は当然、皆無であり、歪ん
だ姿勢は曲がった針金を元にもどす式の短絡的な思考でもって、修正を
しようとするのです。全体との関連の中で必然的な対応の姿などという考
え方はみじんもないのが実情です。
上記の首が前方に凸出しているタイプの人が、首の位置を体幹部に戻
してしまったら、後方に転倒してしまいます(実際には人体は筋肉の収縮
力でカバーするので転倒はしません)。