脊椎骨間には、ショックアブゾーバ(衝撃吸収)としての椎間板が組み込
まれています。しかし、脊柱の生理的カーブ逸脱による応力集中が長期
間に及ぶことによって、ついに椎間板という“袋”が破損してしまい、流れ
出ている姿がヘルニア(脱出)現象なのです。
 腰椎椎間板ヘルニア以外で、腰椎分離症、腰椎すべり症も同様の機序
と中で応力の集中が椎骨の椎弓部という構造的に弱い個所に及び、ひび
割れ状態になったのが腰椎分離症であり、脊柱の最下部にある第5腰椎
の椎体部(上下の椎骨との接触部分)が前方にすべり出したものが腰椎す
べり症となるのです。


 脊柱の生理的カーブが増大するということは、「脊柱のS字カーブについ
て」の項で解説してありますように、骨盤という土台にあたる下部の構造
躯体の傾斜角が増大すると、その上に乗る腰椎は前湾カーブが増大せざ
るを得ません。これを重力線上にバランスをとるために胸椎の後湾カーブ
も増大し、頸椎の前湾カーブも増大することで、まさに積木のバランスの
とり方と同様のことが全脊柱の柱に発生することになるのです。このよう
に脊柱の生理的カーブの逸脱によって応力の集中が発生し、この状態の
長期持続によって、脊柱の下部の腰椎に椎間板ヘルニアを作りだしてい
るのです。


 人体積木理論は、このヘルニアの根拠と機序をみごとに説明できる理
論です。現代人が見えなくなっている「全体と部分」との関わりをこれほ
ど、わかりやすく教えてくれるものはありません。
 二足直立を果たした縦長な人体構造はまさに、積木を積み重ねた構造
と合致しています。
 子どものおもちゃとしての“積木”は子どもの心をつかんで離さない何か
をその中に隠しもっています。古代より子どもの心をつかむおもちゃには
宇宙の法則、自然の法則をその中にもっているからこそ、子どもはその
素直な心で感じとっているのかもしれません。

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