これらの古代の東西両医学の共通性は、胆汁の分泌低下が、精神状態と大
  きく関わりがあるということを明らかにしている点にあります。胆汁不足は、
  血液、体液の熱を取る作用の低下につながり、それは脳内に熱を貯留させ、
  ホルモン中枢、自律神経中枢までも狂わせてしまうことになるのです。また、
  肝臓は脳内ホルモン、脳の神経伝達物質を産出し、分解する場所でもあるた
  め、肝機能の低下から生じる胆汁不足は、様々な精神的疾患を引き起こすこ
  とになります。
  このように胆汁は単に脂肪の消化吸収の役割を担うだけでなく、実は精神状
  態にも非常に大きく影響していたのです。
   私たちの体には、もともと疾病に対して自然に回復しようとする力が備わ
  っています。病気や症状を自然現象としてとらえ、病院や薬まかせではなく、
  自らの意思で治そうとする気力をもつことが大切です。
  自然界の生物の中で、人間だけが人間脳という頭脳を与えられてきました。
  頭を持ったが故に、傷ついたり、思い悩んだりしながら様々なストレスを抱
  え、人間社会の中で生きています。命ある限り、このすべての悩み苦しみか
  らのがれられるということはありません。ストレスは瞬時に肝臓をうっ血さ
  せ、胆のう、心臓、すい臓、大腸等の他の臓器にも支障をきたしてきます。
  肝機能を正常に働かせ、体の内部から整えていくためにも、できるだけ日々
  の暮らしの中で精神的ストレスをためないように、少しでも軽減できるよう
  に、気もちを切り換えていきたいものです。   次のページへ