ストレッチングボードの効能と実践方法
ストレッチングボードは、角度調節ができる傾斜板の上に立
って、ふくらはぎの筋肉やアキレス腱を伸ばして足関節を柔ら
かくする器具になります。足関節の柔軟性をとり戻すことで
下記のような効果が得られます。
(1)心臓の働きを助け体の隅々にまで血液を循環させ、生命力
を向上させる。
(2)足関節、膝関節、股関節の関節のあそびの部分を回復させる
(3)下腿及び大腿後側の筋肉が伸びて体全体の柔軟性が高まる。
(4)スポーツ時の競技力、走力、跳躍力、敏しょう性が高まる。
(5)腰痛、膝痛、股関節痛、足首の捻挫等の予防改善につながる。
(6距骨の動きをとり戻し脳への司令(電気信号)を正常に復する。
心臓の働きを助ける筋肉ポンプ
心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割を担っており、生
命維持において最重要な働きをしています。故に生命力を維持
し高めるためには心臓の働きを常に良い状態に保たなければな
りません。心臓に異常が起きる最大の要因は心臓に血液が不足
することです。その一因として挙げられるのが心臓に返る血液
不足になります。
心臓は噴出するためのポンプですが、全身に送り出した血液
を心臓まで戻す吸い上げるためのポンプ機能はありません。
では何によって心臓まで血液を返しているのでしょうか?
それは「筋肉ポンプ」になります。
心臓が頭より上部に位置しているため、重力に抗して心臓ま
で血液を送り返すには、強力で大きな筋肉ポンプが必要となり
ます。その為に下半身には、臀部、大腿部、下腿部と大きくて
長い筋肉が配当されています。これだけの筋肉ポンプが働くこ
とで心臓まで血液を送り返しているのです。
その中でも中心的役割を担うのが、下腿のふくらはぎの筋肉
のポンプとそれに連動した足関節の「関節ポンプ」になります。
これが足が第二の心臓と言われる所以です。この二つのポンプ
機構が充分に働かないと心臓に充分な血液を還すことができな
くなってしまいます。筋肉ポンプと関節ポンプを働かせること
ができるのがスレッチングボードになります。
ふくらはぎの筋肉ポンプに連動した足関節のポンプ機構
心臓の形は形状ポンプの形を表わすハート型で表現されます。
ハート型を立体にすると三角錐の形状になります。この三角錐
の中に水を満たし、三角錐の細くなっている下部を圧縮すると、
内部の水は上方に押し上げられます。わずかな力で水を押し出
すことできるのです。これを形状ポンプ作用と呼び、心臓はこ
の形状ポンプ作用を駆使して、心臓の下部をねじりしぼること
で血液を噴出させ全身に送り出しているのです。この仕組みは
送り出された血液を心臓に返す機構としても使用されます。
ふくらはぎの筋肉の形も形状ポンプを表わす長いハート型形状
になっています。ふくらはぎの主な筋肉はアキレス腱に集約さ
れていてアキレス腱が引き伸ばされることで、ふくらはぎの筋
肉の下部が収縮され、血液が上部に押し上げられていきます。
ふくらはぎの収縮伸展による筋肉ポンプは、足関節との連動
があって達成されます。この関係を示すのが歩行時の足関節と
下腿の筋肉の連動になります。
足関節の形状は踵を頂点とする三角形状と言えます。歩行時
に足幅分の体重が踵(かかと)から爪先まで移動します。踵で着
地して、重心は足の爪先の小趾側に移り、足の親指に移行し、
親指の付け根で体を押し出すことで歩行は達成されます。この
間、足関節は底屈と背屈を繰り返します。足関節の底屈と背屈
に連動してふくらはぎの筋肉も収縮と伸展を繰り返します。
足裏の形状は土踏まずを形成していて前後にアーチ構造と、
左右にもアーチ構造をもった縦長な、お椀を伏せた様な構造を
しています。これが歩行時の荷重、抜重に連動して開いたり閉
じたりして足関節のポンプ機構として作動しています。つまり
ふくらはぎの筋肉ポンプと足関節の関節ポンプは連動して第二
の心臓としての役割を担っているのです。
下肢の筋肉と下肢の関節全てに有効
下腿のふくらはぎの筋肉ポンプと足関節の関節ポンプの連動
によって押し上げられた血液は、次の大腿部の筋肉ポンプに
移行し、さらに臀部の筋肉ポンプへと連動されていきます。
大腿部の筋肉は人体中で一番大きく長い筋肉で、臀部の筋肉
は丸く巨大なハート型の筋肉になります。この強い形状ポンプ
が足関節、下腿と連動しながら血液を心臓に送り返しているの
です。この連動を維持するためには、足関節や下腿だけでなく、
大腿部の筋肉、臀部の筋肉、さらに膝関節、股関節の関節も良
い状態に維持することが不可欠です。ストレッチングボードは
これらの下肢の筋肉と下肢の関節の全てに有効に作用します。
関節の秘密
人体の関節には、「関節の動きの秘密」と言う特別な三つの
仕組みが組み込まれています。一つめの仕組みは、関節は屈曲
と伸展という一軸性の動きではなく、螺旋の動き(360度円錐
運動)ができることです。二つめは自分の意志では動かせない
不随意運動が組み込まれていることです。そして三つめは関節
のあそびになります。
関節のあそびとは、関節可動範囲内で自分の意志ではコント
ロールできない自動関節運動範囲を超えた部分に認められるわ
ずかな関節の可動性のことを言います。これは車のハンドルに
組み込まれているハンドルのあそびと同じような仕組みになり
ます。ハンドルはしっかり固定されていては、スムーズに回す
ことはできません。故に必ず短い範囲でのあそびの領域が組み
込まれています。このわずかなあそびの動きがハンドルの回転を
成り立たせています。
この原理は人体の全ての関節にも当てはまります。このあそ
びがなくなると関節が固くなり動きに制限がかかります。体の
ひねり動作に於いて、足、膝、股関節、体幹という下半身の関
節の連動がなくなり、一本の棒状の動きのようになってしまい
ます。足関節、膝関節、股関節の、関節のあそびが消失してし
まうとスムーズな足からの連動が起こらなくなるのです。
関節のあそびは加齢と共に消失していきます。このあそびを
復活させ維持していくための運動がストレッチングボード上で
の「体幹のねじり運動」になります。ストレッチングボード上
でねじり運動を行なうことによって、足関節、膝関節、股関節
の関節にあそびの部分をとり戻し、関節、筋肉、靭帯、腱の血
液の循環、神経の走行を促進させます。
スポーツ時に有効
筋肉の作用は、その収縮を利用して関節を動かすことにあり
ます。故に筋肉の収縮力が高まることで、より強い走力、跳躍
力を得ることができます。
ゴムの収縮を高めるには、ゴム自体が長く伸ばせることが必
要です。これを作り出すことができるのがストレッチングボー
ドになります。
また足関節、膝関節、股関節の関節のあそびを最大限に引き
出すことができるので、各関節の細かな動きや関節の調整力
を高め、敏しょう性を向上させます。筋肉疲労も軽減できるの
でふくらはぎや大腿部の筋肉の痙攣、足首の捻挫、転倒等の
予防にもなります。
家庭療法としてのストレッチングボード
ストレッチングボードは台の上に立つだけで、足関節が最大
背屈し、ふくらはぎの全筋肉、アキレス腱のストレッチングに
なりますが、この状態から前屈や立位での体幹の回旋運動、膝
を屈曲しての回旋を加えていくことで、より効果が得られます。
体幹の回旋運動は足関節、膝関節、股関節に関節のあそびを
作り出してくれます。さらに台上で前屈することによりふくら
はぎと大腿部の後側の筋肉を気もちよく伸ばせます。交互に重
心をかけていく片足動作も加えます。
またストレッチングボードは日本伝承医学の三指半操法(さん
しはんそうほう)と同じように、失った距骨(きょこつ)の動き
をとり戻すことができます。
距骨は脳へ電気信号を送るための最重要な骨となります。
この距骨の関節(距腿関節)が動きを失うと脳への電気信号が遮
断されます。脳(視床下部)から全情報伝達が発令されるため、
電気信号が脳へ正常に送られなくなると、自律神経等が乱れ様
々な不調を招くことになります。日本伝承医学では家庭療法と
してストレッチングボードを45年間推奨しその効果を立証して
います。
距骨(きょこつ)はくるぶしの内側にある約3㎝の唯一筋肉が付着して
いない骨になります。人体の足にかかった重力を正確に脳に伝えるため
には筋肉が付いていては妨げになるからです。距骨は単なる足関節の軸
ではなく脳へ電気信号を送るための人体中最重要な骨になります。距
骨、脛骨、腓骨から構成される足関節を距腿関節と言いますがこの足
関節の動きが固くなると脳への司令(電気信号)が正常に働かなくなり
ます。中枢部である脳幹が支障をきたすため運動神経が遮断され筋出力
(筋肉を発揮させる力)が著しく低下します。日本伝承医学の三指半操法
は失った距骨の動きをとり戻し、距骨を介して骨髄幹細胞にスイッチ
を入れ造血力と細胞新生力を高める学技になります(詳細は日本伝承医
学のホームページ『距骨の重要性』をご覧下さい)
実践方法
ふくらはぎの筋肉の張力が気持ちよく伸ばされる状態で台の
上に立ちます。角度をつけすぎて張力が強く、苦しい姿勢での
ストレッチングは逆効果となります。また体が硬い方はふくら
はぎの筋肉が伸びないので、自然な形での立位の姿勢がとれま
せん。腰がまっすぐ伸びずに前のめりになってしまいます。
この体勢でのストレッチングは体に負担をかけてしまうので、
一番低い角度でもつらい場合は、傾斜板を横にしてゆるやかな
角度で行なうようにして下さい。姿勢を崩さす無理のない姿勢
で、気もちよくふくらはぎが伸びる状態で行なうことが大事です。
ストレッチングボードは日本伝承医学のひとり操法もとり入
れています。各項目に数回と記載してありますが、回数には個
人差があるので自分の体調、症状に合わせて無理のない程度で
行ないます。実践方法は受診時に説明していますので文章を読
んだだけで行なうことがないようにお願いします。
(1)台上に体軸を意識して直立し、両手を自分のももの上に当
て、体幹の軸を意識して体幹をねじる回旋運動を数回行ないます。
(2)台上で立位の姿勢のまま、胸の前で手を合わせ合掌の形を
作り、両肩を上にもち上げて、ストンと落とす動作を数回行な
います(両肩ストン法)。次に頭頂部をリズミカルに軽くリズ
ミカルに叩打します(頭頂叩打法)。この操法は全脊柱、骨盤、
股関節、膝関節、足関節の関節に電気を発生させ、関節内の
滑液を環流し、関節機能を促進します。
(3)脱力して前屈運動をします。次に片方の下肢は伸ばし、
もう一方は膝を軽く曲げての前屈運動を交互に行ないます。
(4)台上で両膝を曲げた状態で、両手を両膝頭に当てて、腰を
左右に振りながら、下肢のねじり運動を数回(10回位)行ない
ます。以上で約3分位になります。毎日日課として行なうこと
が大事です。
(参)ストレッチングボードは各種メーカーから出ています
が、日本伝承医学が推奨するのは「アサヒストレッチング
ボード」になります。踵部に柔らかいパッドが付いていて、
踵(かかと)を包み込んでくれるので踵部に痛みがなく、
体勢が安定します。角度は5度から30度まで調整できるの
で症状に合わせて無理のないストレッチができます。ふく
らはぎの筋肉が心地良く伸びていると感じられる角度に設
定して使用します。