脊椎動物であります我々の人体は「骨」を身体の支持組織として利用す
るという働きに加えて、母なる海に代わってカルシウムを主成分とする生
命維持に必要なすべての元素を骨に貯蔵しました。そして必要に応じて
血液、体液に溶出し、人体のすべての組織に供給する役割を担うことに
なったのです。
脊椎動物における骨の形成は、単に陸上の重力(1G)に対応できる支持
組織としての骨格だけでなく「物質・エネルギー・情報」の貯蔵庫として働
いているのです。
人体の血液、体液(水)の成分組成は母なる海の海水成分とほぼ同等と
いわれています。この「水」の成分組成を常に一定に保たなければ、生命
維持はできません。
例えば腎機能が低下して、血液、体液(水)の成分調整ができなくなると
人工透析が必要になるように、体内の「水」(血液、体液)は常に一定の成
分に保たなくてはなりません。
この成分調整に関与するのが「骨」の中のカルシウムに代表される各種
ミネラル成分の溶出なのです。骨という貯蔵庫がなければ、これは達成
できないのです。
身体の中で目に見えて活動しているのは内臓であるため、これまで骨
の重要性はあまり、研究されてきませんでした。しかし骨は内臓と同じくら
いどころか、内臓を生かすために、生命維持にとって欠かせない重要な
役割をもっていたのです。すべての生命元素を溶け込ませた「水」が最重
要物質であり、その貯蔵庫としての役目と、成分調整を「骨」が担っていた
のです。
骨こそ、生命活動の中心たる「物質」が集積している器官です。その代
表たるカルシウムは、すべての細胞の機能調節物質として最重要であり
ます。ナトリウムとカリウムと一緒に細胞の受容・伝達・処理・反応に一番
関与する物質でもあります。細胞が生きるための、細胞呼吸、エネルギー、
代謝は、実は「骨」が関わっていたのです。
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