自然良能への道



(一)がん発生の根拠と機序をしることのたいせつさ



 ここまでがん発生の根拠と機序を詳細に解説してきました。現代人がも
っとも恐れ、不治の病、悪の権化という死のレッテルを貼られているがん
を、180度転換した視点で捉えなおす試みでありました。
 これまで、このような視点に立って、がん発生の機序を見つめたものは
存在しません。しかし、何も難解なことを主張しているわけではありません。
きわめてあたりまえな「天然態」な考え方です。
 生物として、命を存続させていく「生へのプログラム」の視点に立てば、
幾重にもはりめぐらせた生への対応手段を持っているのが当然です。そ
のシステムを解読したにすぎません。命(生きる)とは、「内・外の環境の変
化に時々刻々変化対応している姿」です。
 昔の小学校唱歌の中に「鉄道」を歌ったものがあります。「イマは山中、
イマは浜、イマは鉄橋渡るぞと、思うまもなくトンネルの闇を通って広野原」
という歌詞です。イマはけっしてとどまってはいないのです。時々刻々にイ
マは発生しているのです。
 変化対応の姿こそが「命の本質」でありましょう。この観点に立てば、病
気というものが個体を死なすことが目的であるはずがありません。命を守
り、生き抜こうとする“生への変化対応”と捉えることこそ「天然態」であり
ます。


 人体が生をまっとうするための条件としての恒常性維持機構(ホメオスタ
ーシス)に着目し、ホメオスターシスの中心的役割を「熱をすてるシステム」
として捉えました。熱をすてる通常システムに破綻が生じた場合、その非
常対応手段が各種症状としてあらわれてきます。
その非常対応システムを5段階に分類しました。
  (1) 皮膚病としての対応
  (2) 体表にできる腫瘍としての対応
  (3) 体内の水症としての対応
  (4) 体内の腫瘍としての対応
という段階的対応システムです。
そして最終的対応の姿として、第五段階目にがんの発生を捉えています。
さらに“負の生命力”として、がん発生の機序を解説しています。この二つ
の解説から、がん発生の根拠と機序を正しく認識していただきたいのです。
発生の機序を「正しく知る」ことにより、大脳(人間脳)を最高度に発達させ
た我々人類は、その“対処法”をも獲得することが可能になったのです。
「正しく知る」ことにより、間違ったレッテルをはがし、不治の病としての恐
怖や不安からも人は脱却できるのではないでしょうか。

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