心包と三焦の関連の考察



 漢方医学における心包三焦の関係を、日本伝承医学の生命観、人体
観と照らし合わせながら、その真意を探ってみたいと思います。
日本伝承医学の生命観は骨を生命活動の中心としてとらえ、すべての
内臓、脳、筋肉、関節との関連を考察しています。その中で、内臓に
おいては心臓を一番重要な臓器として位置づけています。
漢方医学では五臓(肝、心、脾、肺、腎)を中心として考え、胆のう、
小腸、骨、大腸、膀胱を五腑としておいています。その五臓五腑の関
係は、どれが中心というものではなく、相生、相克のバランス関係の
中で並列的に成り立っています。
 五行説の中での運用は、五臓五腑で当てはまるのですが、十二経
絡、時間配分(十二等分)、脈診に配当するためには、十二種類に配当
しなくてはなりませんでした。そのために心包と三焦という概念を
導入する必要性があったのです。そして五臓に心包を五腑に三焦
を加えることで、六臓六腑とし、12種類に配当したのです。
 漢方医学では心包を心の外衝(心の外を守るもの)と考え、心膜とい
う概念でとらえました。心臓を保護する膜で、病気が直接心臓を侵さ
ないように心包が代わって病を受けると考えられていました。また、
三焦を気の通路、体内の水路ととらえ、体の上・中・下の3個所に区
分しました(上焦・中焦・下焦)。舌下から胃の上口までを上焦と
いい、胸部と心臓、肺を包含し、天の気をつかさどり、呼吸運動や
飲食物の受納を補佐するものとしました。また、胃の上口から下口
までの部分を中焦といい、上腹部と胃、脾臓を包含し、地の気を
つかさどり、胃と脾の消化、及び運化の働きを補佐するものとして
とらえました。
下焦は胃の下口から陰部までをいい、下腹部をはじめ、肝、腎、
小腸、大腸、膀胱などの臓腑を包含し、主として水液の清濁を分類
するものとしました。心の外衝である心包に対して、臓腑の外衝を
三焦とし、大事な所を受け持ち、守るという概念で両者の働きを
とらえていました。そしてこの心包と三焦を表裏の関係として位置
づけていたのです。
 日本伝承医学では心包と三焦をホルモン系としてとらえています。
日本伝承医学では、心臓を内臓の中心としているため、心包を単に

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