負の生命力をわかりやすく解説する例として4例をあげました。多少ニュ
アンスの異なるものもありますが、何かを犠牲的に発生させることによっ
て本命を生かすことにつながるという点においては共通です。負の生命
力とは、以上の説明の中から、理解していただければ良いかと思います。
 がんというものが、個体を死なすことが目的であるはずがありません。
それは「生へのプログラム」がされている生物として、当然備えている最
終の非常対応手段なのです。
 がんは、人間のみでなく他の動物にも魚類にも植物にも普遍的にみら
れます。いわば、“必要悪”の状態です。その現象だけみれば良いことで
はないように思われますが、個体の生存を保つ、最終対応の中でやむを
得ず、無理ながんばりをしてくれている姿になります。
 従って個体が一刻も早く生命力を取り戻し、ある状態にもどりさえすれば
がんは、自然に退散していくものです。がんが自然消滅していく例は医学
界でもたびたび耳にすることがあります。


 がんを悪の権化として、敵として恨み恐れ、抹殺、征服することしか考え
ないのは、あまりにも一方的といわざるを得ません。
 がんを早期発見して、切り取ったり、薬で殺してやっつけたりすることは
「がんを治した」ことにはならないのです。なぜならば、がんは非常対応手
段の第五段階であり、前の四段階が改善されているわけではないからで
す。一時的に見かけ上、切り取ったり、殺したりしたにすぎません。その人
が非常対応の四段階目にある限り、がんはいつでもまた再発します。がん
発生の根拠と機序をしっかりと認識しなければ、この過ちを永遠に繰り返す
ことになる“道理”をまず理解しなければならないのです。


 植物のがんの中によく見かけるわかりやすい例として、“トマトのがん”
があります。温度落差の大きい高原で栽培された野菜は格別ですが、中
でもトマトはすばらしいものです。ことに身内にがん(真っ黒なしこり)を蔵し
ながら真っ赤に完熟したものは、形は不恰好ですが、味はまことにおいし
いものです。枯れて、腐って落ちることなく生をまっとうした姿であり、力強
く生き抜いた証(あかし)で、あります。
 人間の場合でも、がんを切り取ったり薬で処置せずに、共存して生きるこ
とを決意して、自己の天寿をまっとうされたかたがたも多数おられます。
その方たちは、がんに負けることなく、おだやかに健やかな生活を送られ
豊かな人間性を深く秘めていらっしゃいます。


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