本来細胞自身が、がん化したくてがんになるものではなく、まして個体
を死なすことが目的であるはずがありません。従って、個体が一刻も早く
本来の生命力を取り戻し平常な状態をむかえてくれさえすれば、がん細
胞は自ら退散していく過程を必ずとっていくのです。 
 がんは人間のみでなく、他の動物にも魚類にも植物にも普遍的にみら
れるものであり、いわば“必要悪”の状態である点をまず認識しなければ
なりません。個体の生存を保つバランスの上で、やむをえず無理な働き
をしてくれているわけです。“負の生命力”としての作用を黙々とこなして
くれている“生命防衛隊の影の先鋭部隊”であるのです。悪の使者扱い
されては彼らは、うかばれない存在となってしまいます。
 わかりやすく言えば、負の生命力としてがんを発生させ、命の火をつな
ぎとめてくれている間に、つまりときを稼いでいる間に正常細胞が、正常
な働きを取り戻せば生命は救われますがこの機を逸すれば、がんによっ
て命が失われることになるのです。


 がんを、命を守るための最終対応の姿として、“負の生命力”と位置づ
けていますがこれまで解説してきました体内の高熱や炎症も、負の生命
力の一環として捉えることができます。
 人体にとって36度5分以上の高熱の発生は、さまざまな症状を引き起こ
します。しかし全身の発熱は、体内の細胞の分子運動を活発にし、身体
を元に戻す対応に他なりません。
そして全身の熱の発生だけでは修復できなくなると、次の対応は内部に
部分熱を発生して、個別に機能低下した組織・器官を修復しようとします。
これが“炎症”です。 “炎症”の発生は、腫脹、疼痛といったつらい症状を
引き起こし、つい悪い反応と捉えがちですが、炎症を起こすことで組織・器
官を元に戻してくれています。
 発熱や炎症は、人体にとってつらい症状です。故にこれまで“悪い症状
として、一方的に考えられてきています。しかし発熱、炎症は“熱”を発生
させ分子運動を活発にすることによって修復を図ろうとする、いわばこれ
も負の生命力の発現として捉えることができるのです。
 腫瘍(オデキ)も当然、負の生命力の一環であります。発熱・炎症・腫瘍
は軽度の“負の生命力”の発現と捉えてよいでしょう。そして最強度の負
の生命力の発現が“がん細胞の増殖”と位置づけられるのです。
 がん組織は“血の海”と形容されています。次々に新しい血管が新生さ
れ、血液が大量に動員されていきます。がん細胞の増殖の勢いは、この
大量の血液を糧(カテ)として、”血の海”とも“火の海”とも形容できるもっ
とも強いものでありましょう。

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