ほんとうにがんは“悪の権化”なのでしょうか。私が考察した「がんは命
を守る最終対応の姿」という観点からすれば、これを根こそぎ取り去った
りするということは、会社の生き延びる姿の例の中で述べてありますよう
に一時的に閉鎖・休止している工場を取り壊してしまう行為に相当します。
取り壊すということは、余分な費用を供出することになり、経営悪化してい
る会社をますます窮地においこむことになってしまいます。窮地においこ
まれれば、おいこまれるほど次々に工場を閉鎖・休止させなくてはならな
くなってきます。
そのたびに工場を取り壊していたら余分な出費でますます赤字経営に
なり、やがていつかは、会社自体が倒産してしまいます。がんを根こそぎ
取り去るという行為は上記の例が示すとおり、手術による生命力の低下
と相まって人体をますます窮地においこみ、その結果として最終的な非常
対応手段を発動させて、また次の組織へとがんを再発させていくことにな
るのです。
抗がん、制がん剤、放射線療法も根こそぎ取り去る外科手術と同様の
結果を生体にもたらします。それにプラスされて“両刃の剣”といわれるよ
うに、がん細胞も他殺においこみますが、正常細胞をも殺してしまいます。
その副作用の大きさは衆知の通りです。これでは最終的非常対応の手
段として一部の組織をがん化させ、一時的に閉鎖・休止させることで省エ
ネをはかり、全体の生命力と免疫力の修復のためのエネルギーと時間を
供給するという、本来の目的を失うことになってしまいます。結果として、
新たな別の組織へがんを発生させることになっていくのです。
がんというものが、命を守る最終的な対応という新たな認識を獲得する
ことにより、がんの処置法の中に新たな選択肢を生み出してくれることと
思います。
「何もしないで、共存していく、その中で生活習慣の改善を図り全体の
生命力、免疫力を向上させていく」この方法も、選択肢の中のひとつに
入っていい時期がきているかのように思われます。
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