人体の備える命を存続させるための対応手段を使い果した場合、最終
的な対応として、人体のある部分、一組織を一時的に閉鎖、休止させる
ことによって、個体全体の命は存続させますという姿が、がん発生の機序
と考えられるのです。
がんは、その組織を死滅させるために発生しているわけではないのです。
一時的に閉鎖、休止させることでエネルギーの損失を抑え、その余剰エネ
ルギーを他に回すことで全体の機能の底上げをはかることを目的とした対
応と考えられるのです。個体全体の命を守り、回復のための時間を供給す
る目的も含まれているのです。
この一時的閉鎖・休止の間に、命は個体全体の生命力、免疫力を改善
する努力をします。生命力、免疫力が回復すれば、がん細胞を自主的に
撤退させることもできます。それにより一時的閉鎖、休止においこまれて
いる組織を再稼動させることも可能になり、再稼動しないまでも、人体にと
って害をもたらさない、部分的な壊死組織あるいは石灰化という状態に変
化させることも可能になっていくのです。
組織のがん化は、命存続の非常対応の最終手段です。しかし、最終対
応を回避できたとしてもそれが非常対応であることに変わりはありません。
前段階の4段階をも改善させていかなければ、がんの再発は防止できま
せん。だからこそ非常対応手段の4段階の根拠と機序を正しく認識するこ
とが、再発防止には不可欠となってくるのです。
現時点では一般的にがんは最も恐れられ、不治の病、死の病つまり悪
の権化という捉えられ方をされています。確かにがんは近年日本人の死
亡原因の第一位にランクされています。このようなイメージで捉えられて
いるのは当然といえましょう。 しかし自然界や社会を貫く大原則として、
モノ・コトには、正・反が相反する面をもっていて、その二面の「相反」と「統
合」によって成り立っているとされています。
この原則に照らして、逆の視点から病気、症状を捉えなおしてみること
がたいせつです。
病気や症状は負の対応ではなく、正への対応であるという視点でもって
生命、人体、疾病を捉えなおしてみると、今まで気づかなかった真の姿が
鮮明に見えてきます。
“正への対応”という観点でがんを捉えなおしてみると、今まで見えなか
った、がんの真の姿が“浮き彫り”になってくるのです。
がんに対する現在の処置は、一方的に悪者扱いされ、根こそぎ取り去っ
てしまうという外科手術、徹底的にたたくという抗がん、制がん剤療法、放
射線療法が主流となっています。がん治療の選択肢には、これしかない
というのが現状ですが、視点を変えてがんを捉えなおしてみるとあらたな
選択肢がみえてきます。