「命の階層構造」の項ですでに詳述してありますように、“生きている状
態”を個体として人体に求めるだけでなく、生きている状態を階層的に微
生物、あるいは細胞から宇宙全体にまで拡大し、生きている状態の共通
分母をさぐることで、生命を捉えなおす必要があるのです。
 個体としての人体だけが生きている状態ではありません。目に見えない
微生物であります細菌やウイルスから、生命の最小単位であります細胞
も、人間が幾人か集まった家族も社会も国家も生態系も地球もあるいは
会社も生きています。これらすべてが生きている状態として把握できるの
です。
 これらに共通する生き延びていく共通の分母が見つかれば、個体として
の人体の“命存続の原理”が見えてくるのです。この中から会社の生き延
びる姿を例にあげて、人体が命を守る最終対応手段として、がんを発生さ
せていく機序を解説してみたいと思います。


 例として会社は鉄を作るメーカーとします。この鉄を作る会社は、全国各
地に工場をかまえています。会社が経営悪化に陥った場合、まず生き延
びる対応は、社員全体に経費節減や省エネを呼びかけます。賃金カット
も行うでしょう。大幅なリストラ(人員整理)も行います。考えられるあらゆる
処置を講じるはずです。
 しかし悪化を止められない場合、この会社の最終的な対応は全国に散
らばっている「工場」の一部を一時的に閉鎖、休止するという処置を取らざ
るを得ません。一時的に閉鎖することで会社全体は生き残っていくという
対応をせまられます。この場合支障の少ない工場から閉鎖するのは当然
の処置となります。次々と工場を閉鎖させることで、生存を試みるはずです。
この対応処置によって会社は命脈を保つことができるかもしれません。
まさに最終的な非常対応手段です。経営が好転すれば、また再稼動の可
能性は残されています。 この“会社”が生き延びていく対応の姿は、その
まま人体にあてはめることができるのです。


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