有本先生は単にひざの痛いところだけをみるのではなく、私の体質、頭
痛、腸の弱り、冷え性だということ、私の体のすべてを瞬時に把握してくれ
た。そして何よりも私の心に目をむけ、希望をかなえようとしてくれた。まだ
十九だった私に先生は、体の摂理、生理現象、病理現象を丁寧に教えて
くれた。日本伝承医学の一回の治療でひざの痛みはうそのように治まり、
私は無事合宿に参加することができた。
医師によって診断はまちまちなんだ。それを解決してくれるのに、体全
体、体質など全てを総合的に見てくれる医学があったんだというありがた
さをこのとき知った。それからは、体質的な弱さを調整していくために有本
先生のもとへ通った。私の体の周期に合わせて施術していくうちに、生理
不順も治り、頭痛薬、鎮痛剤を自然に手放していくことができた。
私は、今まで病気は病院へ行って医師が治してくれるものと思っていた。
具合が悪いときには医師の診断と治療、そして薬が治してくれるものだと
思っていた。でも日本伝承医学に出会い、病気とは、自分の命を守るため
の体からの警告サインで、悪いことではない。病気になることで、今までの
生活習慣や考え方などを見直して自らが自己免疫力を高め、治していくと
いう気もちをもつことも大切だということを知った。そして何よりも病気とは、
その患部だけを局所的にみるのではなく、体質や内臓機能をふまえて体
全体からみていくことが大切だということを知った。まだ十九才。今から二十
四年前のことだった。
病院が絶対的で、患者は医師の言われるまま処方された薬を飲み、医師
に治してもらうものと誰もが信じて疑わない時代だった。
自宅で、自分が日々の生活の中で、できる努力をすることで、健康を取り戻
すことができる。大病を未然に防ぐことができる。私は有本先生からいろん
なことを学ばせていただいた。外出から帰って、塩水でうがいをすると喉の
粘膜が鍛えられるから風邪をひきにくくなる。疲れたり、気分が悪いとき、貧
血気味のとき、氷で肝臓を冷やすと体が楽になり、血液の循環を高めること
ができる。息苦しくなったら、横になって右足を開いて、右足を床から高く持
ち上げるだけで心臓に血液が返り、らくになる。体調が悪くても自分ででき
ることはいっぱいあるんだということを知った。
元気とは元の気を取り戻すこと。病気とは、医師任せでなく、自分の気力、
努力も大事なんだということを身をもって知った。
その後私は、結婚、出産。そして離婚を経験していた。娘とのふたり暮らし
の中で様々なストレスから気づかないうちに再度私の体は蝕ばまれていっ
た。生理のたびに大出血を起こすようになり、貧血から何度も倒れた。娘を
出産した大学病院で、子宮筋腫ということばをはじめて聞いた。絶望だった。
仕事ができなくなる。休んだら収入がなくなる。さまざまなことが脳裏をよぎっ
た。再受診したときには「もう手段は手術しかありません。手術で子宮を摘出
しないと、死にますよ」とはっきり言われた。
私の筋腫は最も悪性の部類で出血量が多く、激痛を伴うものだった。