人体は命を存続させるために、事前にさまざまな形でシグナル・サインを
出しています。何年も、何十年も前から出し続けているのです。この人体に
出されるシグナル・サインは、初めは必ず、皮膚、筋肉という身体の表面部
にあらわれてきます。
 例えば、代表的な虫垂炎(盲腸)は、当初胃の上部付近に鈍痛として出
現し、次第に当該部位の右の下腹部に反応が出て、押すと圧痛を感じる
ようになるのです。これは、内部の異常を知らせるサインであり、現代医学
ではこの反応点をランツ点、あるいはマックバーネ−点と呼んでいます。
その他、胆のう炎、胃潰瘍、肝炎、腎炎等の内部の異常が体表にあらわ
れる点を“内臓体壁反射”という概念で捉えています。これらは比較的、
当該臓器と近い場所に出現し、内科診断の重要な役割を担っています。


 この内臓の異常サインを手、足を含めて全身に波及させて捉えたものが
東洋医学に見られる、つぼ(経穴)という概念であり、共通する「ツボ」を線で
結んで、あるルートとして発見したのが経絡(ケイラク)という概念です。
神経の走行とは、まったく別のルートで全身を上下に走行し、頭から足ま
で連絡しています。
 この経穴・経絡は五臓六腑といわれる、内臓すべての反応点・反応線と
なっています。
(十二経絡)故に、鍼灸の世界では、例えば胆のうに異常や機能低下があ
れば、頭から足先までの身体の側面全部に反応があらわれることを、何
千年という経験的事実として教えてくれているのです。胆のうに起こった
いかなる微細な異常も即座に、このルート上のどこかに反応としてあらわ
れサインを発しているのです。
 古代中国人の偉大な発見であり、五臓六腑の状態を全身の体表体壁
(皮膚、筋肉)に鏡のように映し出してくれるのです。
 これらのサイン(兆候)は、当初、皮膚上の色、つや触感(ザラザラ、カサ
カサ、しっとり、べたべた感等)、温度(温・冷)として微妙にあらわれます。
次に、押すと違和感や痛みのある圧痛点という形で出現します。そして次
の段階としていわゆるこり感として感じられます。肩こり、首こり、背中のこ
り、手足のこり、足の裏のこりとして全身にあらわれてきま」す。

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