「命の物理」の項ですでに論述してある通り、命を存続させる中で一番
重要なことは、体内の電気レベルを常に一定に保ち、時々刻々に大地か
ら大気から電気粒子を吸着し補充充電することです。
 現代人はこの命の物理に気がつかず、健康を保つには食事において
何を食べなくてはいけないとか、何時間眠らなければいけないとか、こう
いう呼吸法がいいとか、歩かなければいけないとか、運動をしなければ
いけないとかいう枝葉末節の部分にばかり頭を働かせ、一番大切な命を
成り立たせている「命の物理」に気づいていないのです。
こうしなければならないという義務感や思い込みこそが、“捉われの心”
であることを人はまず知らなければなりません。
 疲れを知らない子どもの謎は、実はここにあったのです。子どもは心の
緊張と脱力のバランスが必要に応じて自然に使い分けられており、おと
なのように頭で考えて行動や生活をしていません。「素問」に述べられて
ある通り、子どもはまさに「捉われのない心」で生きているのです。


 捉われることなく心の力を抜いて生きていれば、身体に余計な緊張が
入らず全細胞のあいだが開かれ時々刻々に大地から大気中から、電気
粒子を吸着し補充充電できるのです。心の脱力は、細胞ひとつひとつの
脱力、弛緩にもつながっているからです。
 弛緩すればそこには無駄な抵抗がなくなりすべての細胞が開かれてい
きます。全細胞のあいだが開かれればエネルギー、電気の出入りがしや
すくなるため、果てしなく電気を補充充電できるのです。そして体内の電
気レベルを常に一定に保つことができるのです。
 逆に心の緊張状態が続くと身体も全細胞も緊張していきます。緊張す
れば電気の流れが遮断され血液などの体液の循環も悪くなり、筋肉もこ
わばっていきます。循環が滞れば細胞の働きも停滞し閉鎖するほうへと
むかいます。細胞が閉じようとしている状態ではいくら電気を体内に補充
充電しようとしても満たすことはできません。そして電気不足の状態が続
くと細胞の機能が充分に果たせなくなり病を引き起こしていくのです。
 人間の生物としての寿命は120歳くらいといわれています。しかしこれ
をまっとうできる人はほとんどいないのが現状です。
人は何故病気になっていくのか。解答はすでに古典の中に示されていた
のです。現代人の脳がまるで洗脳されたかのごとく、古代人の知恵の遺
産を抹殺してしまっているところに、根元の問題がひそんでいるかのよう
に思われます。                

                                 2003.8.20

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