次に神経による直接的な調節作用をあげてみます。

肝臓を支配しているのは、自律神経の中の交感神経です。交感神経の緊張
はグリコーゲンを分解し、糖新生を促進刺激して血糖値を上昇させます。逆に、
自律神経の副交感神経の中の迷走神経(胃を支配)は肝臓のグリコーゲンの
合成を高め、糖新生を抑制して血糖値を抑える調整をしています。これらの働
きはホルモンを介した二次的なものではなく、直接的に血糖値の上昇、下降
に関与してきます。自律神経の乱れ、特に交感神経の緊張は、精神的ストレ
スと大きく関わります。極度のストレスによって交感神経が刺激されると、肝
臓機能が異常亢進され、血糖値が一気に高くなってしまいます。血糖と精神
状態は大きく関連しているのです。


《血糖値の可変システム》

血液中の血糖値は、血圧と同様に可変できるシステムを人体は備えてい
ます。血糖値は正常な場合でも、食前と食後では異なります。炭水化物が小
腸で吸収されて肝臓に行き、血糖が作られ血液中に入るため、食後の血糖
値は食前より高くなっていきます。一応の目安として、空腹時の血糖が70〜
100mg/dl、食後一時間位の血糖値は140mg/dl以下になります。60歳以上で
は空腹時血糖110mg/dl以下、食後1時間血糖160mg/dl以下が目安といわれ
ています。これらの数値は性別、年齢、条件によって可変し、一日の中でも変
動していきます。

また、加齢と共に高血糖になるのは、年をとるとエネルギー代謝力が落ちる
ため、体はそれを補おうとし血糖を高くしているからです。血糖値は常に変動す
ることで、人体のエネルギー代謝を維持してくれています。ですから一過性に血
糖値が200mg/dl以上になったとしても、けっして驚くべきことではありません。
命を守る対応として必要だから高くしているのです。季節によって、一日の中の
時間によって、また加齢と共に変動していくことで、そのときの体の条件にいち
ばんあった血糖値を体は察知し、調整し命を守ってくれているのです。私たちの
体は生き抜くために、自動的に修正する能力があるということを、再認識する必
要があります。

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