血糖値をとらえなおす

《血糖値とは何か》

 血液の中に含まれるものといわれて思い浮かぶものはなんでしょうか?
赤血球に白血球、血小板、コレステロール等、血液中には約600種もの成
分が含まれています。これらの成分を大別すると、赤血球などの有形成分
が45%、水分や糖質、脂質などの液体成分が55%となっています。

その液体成分のうち、糖質はわずか0.1%程度を占めるに過ぎません。驚く
ほどわずかな含有量になります。血液中にしめる割合は小さいですが、血
糖の果たす役割は大きく、私たちの生命を左右する重要な成分のひとつに
なります。

では血糖はどうやって作られているのでしょうか?

私たちが食事をして栄養を補給すると、まず胃の中で細かく砕かれ消化され
ます。次に小腸に送られ、ここで栄養素の中の糖分が肝臓に吸収されます。
そして肝臓で血糖に変換されて、必要な量の糖分が血液中に送り出され、エ
ネルギー源として身体各組織を働かしてくれます。特に脳にとって血糖は、唯
一のエネルギー源として大切な活動の源となっています。余った糖分は、グリ
コーゲンに変えられて肝臓に蓄えられます。また、緊急時に備えて、脂肪分
に変換されて筋肉中にも蓄えられます。

つまり、私たちが呼吸ひとつするにも、筋肉を動かすにも、血糖が不足してしま
うと体は破綻をきたしてくるのです。そのために人間の体には、たとえ一瞬でも
血糖が不足しないように、徹底した防御システムが組み込まれています。


《血糖の防御システム》

 血液中の血糖の量は常に一定に保たれる必要上、人体には幾重にも安全
対策が施されています。その対策にはホルモンによる調節と自律神経による
方法の二種類があります。

ホルモンによるものをまずあげてみます。

私たちの体は血糖値が下がったときに備えて、5種類の血糖上昇ホルモンを
用意しています。血糖値を上げるホルモンは、すい臓からのグルカゴン、副腎
からのアドレナリン、甲状腺ホルモン、脳内からの成長ホルモン、糖質コルチ
コイドになります。
しかし血糖値を下げるホルモンは、すい臓からのインスリンのひとつだけにな
ります。血糖を上げるホルモンは5つもあるのに、下げるホルモンはひとつしか
備えていないのです。この生体の防御システムをみてみると、いかに低血糖
による生命の危機を防ぐシステムが、人体に備わっているかがよくわかります。
血糖値が高いことばかりを気にする風潮が支配していますが、実は血糖値が
下がることの方が、生命にとっては危険を及ぼすのです。

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