身体の熱を排泄する手段



  前項に引き続き、この世のすべての道具・機械・器具は、人体の構造、
機能、形態の延長上に存在するという考え方をさらに検証してみましょう。
 食べ物を温める鍋とか釜の類を見てみますと、熱伝導を高めるために
様々な形の工夫がみられます。
  一つの例として、しゃぶしゃぶ用の鍋の形状をみてみましょう。普通の
鍋と違って、中心が煙突状にもり上がって、鍋の中の水をより早く、温め
るように考案してあります。酒のカンをつける、鍋も同様の形状をとってい
ます。これらは熱効率(伝導)を高めるための工夫です。しかし逆に考え
ると、内部のお湯の温度を下げるのにも、最適な形状ともいえるのです。
お湯の接している面が普通の鍋に比べ、はるかに大きい形状になってい
ます。
  これを人体の中に探してみますと、これと似たシステム形状を見い出
すことができます。
  人体の皮膚と内部の皮膚に相当する内管系にこれをあてはめることが
できます。人体の外部は皮膚という界面におおわれ、口から肛門までは、
内管系という管で中心が貫かれています。皮膚の表面積は、畳一畳分
位です。口から肛門までは、全長10m位の管が通っていて、この内管の
表面積は、テニスコート1面分位の広さがあるといわれています。
  身体の熱を排泄する手段で、最も有効な方法は、体表である皮膚から
汗を出して、気化熱として排泄する方法です。そのためには、表面積が広
ければ広いほど有効といえます。


  その代表例として心臓の具合の悪い人は、肥満になるといわれていま
す。それは、心臓周辺にこもる熱を処理するために、身体の上半身を膨 
張させて、表面積を広くすることで汗をかき、熱を処理しているのです。
  内管系の大部分をしめる、小腸・大腸は、消化、吸収を効率よく行うた
めにテニスコート1面位といわれる表面積を確保しています。これも逆に
考えますと、内部の熱をすてるためにも、働いていると考えても差し支え
ないでしょう。
 人体の熱の排泄の大部分は、皮膚と内管であります食道・胃・小腸・大
腸の内面を総動員して、熱の排泄を行っていると考えられるのです。
人体の熱の排泄の大部分を界面である皮膚と腸が担っているのです。

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