漢方を現代に活かす


 文明社会に慣れ親しんだ現代人は、人間というものも動物の一種族
であり、自然の環境の中で生き生かされているという感覚を失ってき
ているように思われます。物質文明の発達していなかった時代に生き
た古代人においては、自然環境の変化を細かく観察し、それにどう対
応、調和して生きていけばよいかという方法と知恵を充分に所有して
いました。自分の身体の変化そのものも詳しく観察し、それが自然の
流れ、法則に従っていることも天然にわかっていました。
 例えば、四季の移り変わりの中で、自分自身の身体の中も四季に応
じて変化しているということに気づいていました。春には、春の身体
の状態があり、夏には夏の、秋には秋の、冬には冬の状態変化が存在
しています。その中から、季節に応じた養生法を考案していたのです。
春にはどういうことを注意して生活すればよいか、春に病気になった
場合は、どこに一番原因があるのか、春にはどういうものを食べれば
よいか、どういう運動がよいかまで古代人は私たちに伝え残してくれ
ています。このように季節に応じた養生法(健康法)があるということ
に気づいている人は、現代ではほとんどいなくなってしまいました。
 今世の中では各種健康法があふれ、どれをどう選択したらよいのか
苦慮しているのが現状です。漢方医学の考え方を少しでも日常生活に
導入していけば、自分に合った養生法が明確に見えてきます。
今こそ古代人の知恵を生活の中に活かしていく時期に来ているように
思われます。何千年という長い歳月の中から、細かく自然を観察し、
人間を観察し、経験的事実として、真実を残してくれている古代人の
知恵を、現代生活に活かしながら漢方医学を学んでいただきたいと思
います。

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