次に車の冷却装置としてのエンジンオイルを考えてみましょう。
人体でエンジン・オイルに相当するものは、すべて関節に組みこまれてい
る“関節液”(滑液)がこれにあたります。車のピストン部と同じように、骨
面の摩擦による熱を回避するために、すべりをよくするための滑液(かつ
えき)です。
  作用はエンジン・オイルと同じであっても、機械と違って、生体は実に
精妙に完璧にこの熱に対しての処理を行っています。
車のエンジン・オイルは、ある時間使い続けると、粘性が劣化したり、金
属カスでオイルの色が黒く変色してきます。ある寿命で、オイル交換をす
る必要がでてきます。しかし人体中の関節は、中の滑液を“自動交換”で
きるシステムを有しています。
 滑液の入った“袋”を関節包といいますが、この袋の膜を介して、新しい
滑液と自動交換できるのです。さらに驚くべきシステムは、滑液の粘性
を自動コントロールするのです。
  詳述しますと、通常時は、滑液の粘性は高くしてあります。いったん関
節に炎症が生じてくると、滑液の粘性が下がり、サラサラな液に変化する
のです。そうすることで、関節包の膜の通過の透過性が向上し、新しい
滑液がすみやかに補充され、関節の熱をよりスピーディに、効率よくすて
るように考案されているのです。
まさに、人体の熱をすてるシステムは実に精妙で完璧なものを備えてい
るといっていいでしょう。
  さらにオートバイ等のエンジン外観のフィン(翼)状の形状について考
えてみましょう。このフィン(翼)状の形状は、空気の流れを変えることで、
空冷効果を高めることを目的としています。
この装置が、人体中のどこにあるかといいますと、息を吸い込む鼻の中
に組み込まれています。鼻の内部の副鼻腔というところに、フィン状形状
の部分があり、ここを空気が通過する時に、高温の空気は冷却されて肺
の中に送られるようになっているのです。この空冷装置によって、肺の中
の温度が上がらないように、見事にコントロールされているのです。


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