当然、生命体の方がもっと精妙に、事前の警報システム、防御システム
を備えていると考えることが妥当であろうと思われます。
 それは生命体が人智を越えた、生きるためのプログラムがなされてい
るからです。何億年という長い年月の中、あらゆる条件を克服して生き延
びている現存の生物たちは完璧なまでに生きる術を備えているとみてよ
いのではないのでしょうか。
 個体の中だけに「生命の本質」を見つけようとしても、なかなかその全
容は見出せません。そのためには「生命」というものを「命あるもの」ある
いは「生きている状態」というように、幅をひろげてみますと今まで見えな
かった「生命の本質」をつかめる鍵がみつかるはずです。
 日本伝承医学の生命観、疾病観、人体観はこのように個体としての人
体に求めるだけでなく、幅広くさまざまな「モノ」や「コト」に置き換えて、展
開を試みています。視点を変えることで、いままで見えなかった部分を見
事に浮き彫りにしています。

次のページへ