生きている状態をもっと幅広く捉えなおすためには、生命体という一個
の個体の中に、生命の本質を見ようとしても、なかなかその本質をつか
むことはできません。現在主流となっている「生命の本質」追求の仕方は、
分子生物学に代表されるように、生命の最小単位であります細胞の中に、
それを見い出そうと、栄々とした努力を重ねています。
さらに、細分化され、細胞の核の中のDNAの研究が世界中で行われ、そ
して、その中の遺伝子情報の解析が急ピッチで進められています。
これらの研究の方法も、「生命の本質」を見極めるたいせつな方法である
ことに意義を唱えるわけではありません。
 私が主張したいのは、生きている状態の把握を、生命体という個体の中
だけに求めるのではなく、もっと階層的に拡大、あるいは縮小して大局的
に、生きている状態を把握する必要があるのではないかということです。


 私たちの人体は一個の生命体として日々生きています。私たちの身体
の中の60兆とも70兆とも言われる細胞の一個一個も個々の生命を持って
います。
 この「生きている状態」を個体の中だけに求めるのではなくて生きている
状態をもっと幅広く捉えたり、階層的に捉えたりすることが必要です。例え
ば何人か集まった社会の構成単位であります「家族」も生きています。家
族がたくさん集まった集団としての「村」も「町」も「市」も「県」もまた生きて
います。
 まとめると、「社会」として生きています。もっと拡大すれば、「国」という
単位もまた世界の中で生きているのです。
地球規模で考えれば、ある地域の生態系という、生きている状態が考え
られます。さらに、地球も一個の生命体として生きています。あるいは、
視点を変えて、我々が働いている「会社」という単位も生きています。
  このように「生きている状態」の把握を階層的に拡大していくと、「生き
ている状態」の共通の分母が見えてくるのではないでしょうか。そこから
導き出される法則は、「生命の本質」を見極める上で重大なヒントを与え
てくれるものです。
「生きている状態」の把握方法として、「会社」を例にして考察してみたい
と思います。


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命の階層構造