何故不妊や流産になるのか〜心身からの考察 2016.4.24 有本政治

<流産の肉体的な要因について>
不妊や流産の肉体的な原因と対処法は、日本伝承医学ホームページ「院長の日記」
の「妊娠出産のためには」「出産はいつでもできるわけではない」「不育症の本質」等
に解説してありますのでご覧ください。母胎が新たな命を育む環境にない場合、生命
力が低下している場合等に不妊や流産になりやすくなります。
動物世界での出産育児を例として挙げてみます。自然界の生存条件は厳しく、動物
の子育ての生態等にも示されている様に、この子は自然界で生き残っていけないと
判断したときに、生命力の弱い子どもには餌を与えなかったり、巣から放棄して死滅
させる事があります。残酷な光景に映りますが、これは子孫を残し、種の保存を守っ
ていくための生き残るための本能的手段なのです。

これと同じような事が人間の妊娠出産にもあてはまるといえます。
母胎が新たな命を十月十日育てあげる力がない場合に、流産や死産をさせて母胎を
守る対応をとっていくのです。また胎児が虚弱や奇形の場合も、これ以上育たない
と判断されれば流産や死産になってしまいます。この様に母胎が新たな命を育む環境
になかったり、受精児が虚弱な場合に起こりやすくなります。自然界を生き抜き、種
の保存を守るためには、母胎を守る対応をとらざるを得ないのです。

出産は、母胎の環境が整わない限り流産を繰り返す事になります。また年齢が高齢
化すればするほど卵子が老化し、強い良好な卵子が排出されないのも一因になります。
母胎だけではなく、男性の精子が良好でない場合も正常で強く元気な受精ができず、
虚弱児となり育ちにくくなります。以上が肉体的な要因になります。生命力を高めてい
けば妊娠出産に結びつく可能性はありますが、不妊や流産には心理的な要因も根
底に潜んでいると私は考えています。

<不妊や流産の背景にある要因について>
日本伝承医学は不妊症や不育症に著効を示す治療になります。ここ30年来の私の
不妊治療から感じる事は、昨今の出産可能年齢の女性の母性の欠落になります。
母となる事への自覚が欠如してしまっているのです。結婚しても、仕事や経済的事情
で、子どもはいらないと考えている方々が増えているのが実状になります。
これは単に個人の問題だけではなく、時代の流れの中での生きる価値観の変遷や、
世の様々な流れに準じた生活の変遷からも生じていると思います。幼児虐待や暴行死、
育児放棄が増えてしまっているのも母性の欠落を如実に物語っています。

<環境ホルモンや食品添加物の摂取も不妊や流産の要因となる>
環境ホルモンによる自然界の生物への遺伝子破壊が進み、生物分布異常、生物
の中性化(雌雄同居)等、人間社会においても種の保存に影響を与える生殖機能
の減退や変調が既に進行しています。これらの環境ホルモンに加え食品添加物の
大量摂取は、人々の精神面にも及んできています。体内のカルシウム不足から
すぐにきれる若者の増加や精神薬の常用による自殺や凶悪犯罪の増加もこれらと
無関係とはいいきれません。今や人類は子孫を残す事が難しい時代に入ってきてい
ると言えます。

<出産適齢期の女性の妊娠出産への認識の低さと過信について>
上記の状況に気付いていない人がほとんどの中で、それに拍車をかけたのが結婚
の晩婚化です。女性のほとんどの方が妊娠はいつでもできると過信している点です。
35歳くらいまでなら出産はいつでもできると思ってしまっているのです。本来出産はで
きるだけ早くしなければなりません。卵は年をとればとるほど老化していくからです。
自身の生命力の低下状態と生殖能力の減退を正しく認識していく必要があります。

現代の人達は体力や生命力が低下し、環境ホルモンや食品添加物、生活習慣の乱
れ等からも生殖能力が男女共に著しく低下しているのが現状です。最近では不妊に
悩んでいる方々が多く見受けられます。昨今ようやく卵子の老化という事が叫ばれる
ようになりました(当然男性側にも精子の数と運動能力の低下が指摘されています)。
また不妊治療患者の多さから保険診療の年齢に制限等の処置が設けられています。
出産適齢年代の男女がこの事実と現実を、これからは正しく認識する事が必要になり
ます。

<母体や父親の心理状態が不妊や流産にも関わっている>
精神が肉体の生理機能に影響を及ぼすという現象は、様々な場面で生じています。
現代では精神的に大人になりきれない男女が数多く存在します。精神的には子どもの
ままで、体だけが大人になってしまったのです。これは本人の問題だけではなく親の関
わり方も大きく影響しています。子離れできない親がこうした子どもを生み出してしまっ
たとも言えます。極端なマザコンの子どもが急増したという事です。
これはあくまで私の臨床上の個人的見解ですが、精神が子どものまま出産を望んだ
場合、受精しても流産や死産の比率が高くなってしまうように思えます。
赤ちゃんには、自分は生まれてきてはいけないと察知し、自ら流れたり、自然に滅して
いく科学では解明できない神秘があるのではないでしょうか。
 幼児性とマザコンの問題は、当然男性にも当てはまります。男性は元々ほとんどの人
がマザコン傾向にあります。その中にあって自己愛が強く、幼児性の強い男性は無意識
の内に子どもが生まれることで、自分から母親や妻の愛情が失われることを危惧して
しまうのです。こういった男性の微妙な心理状態も受精やその後の胎児の成長に影響
を及ぼし、不妊や流産の一因になるのではないかと私は考えています。

<幼児性が抜けず親離れできない男女の増加は、何に起因しているか>
上記の問題は両親の子育てのあり方に起因する場合がほとんどです。親が子ども
の生き方に干渉し過ぎたり、自分達の支配下に置き過ぎたり、自分の思い通りに
させようと威圧的なしつけ方をしてきたがために、子どもに自らの意志決定能力が
欠如し、常に親の顔色や機嫌を見て育つようになっていくのです。こういう環境で
育ってしまった子どもは自己主張をせず、いつまでも幼児でいる事で自分の居場所
を作ろうとしていくのです。これが幼児性が抜けない理由のひとつになります。
強過ぎる親に個性と母性や父性を埋没させられ、幼児性の抜けない子どもが増大して
いることも不妊や流産となんらかの関係があるのではないかと臨床上言わざるを得ま
せん。

<子どもができにくいという現実を真摯に受け止める必要がある>
今や生物にとっての命題である子孫を残すという本能的行為が、危機に瀕していると
言っても過言ではありません。地球規模で進行する生物界の異変に気付く時期に
きています。動植物界の奇形や雌雄同一化は、当然人間界にも及んでいます。
また環境ホルモンや食品添加物の影響もあります。それにも増して大きな発達した
脳をもち、感情の動物と言われる人間は、心理面からの影響も受けて、動物とは
違う複雑な要素も加味されていきます。故により深刻な事態を作り出しているのです。
地球規模の問題は早急に解決する事は至難でありますが、自らの生殖能力の低下
を認識し、生命力向上に努めれば不妊や流産を防いでいくことはできます。
これらは不妊治療に携わってきた私の43年の臨床の中から感じた私見になります。
 
※ホームページの『日本伝承医学の適応症』の項に、妊娠出産するためには
  不育症についての記載がありますので御覧ください。