妊娠出産するためには
 
  
日本伝承医学では、妊娠出産を以下のように考えています。子どもができにくい
  
かたの多くに、生理周期の不順と低体温(35度台)がみられます。妊娠するため
  
には、生理の周期の安定(28日〜30日)が半年間位続くようにならなければなり
  
ません。また、体温が35度台ではなく、365分位までに保たれる事が必要です。
  
男性は、精子数の安定と精子の運動力の改善が必要です。これらが改善出来れ
  
ば、妊娠の可能性が高くなります。妊娠できにくいのは、子宮や卵巣という部分的
  
な問題だけではなく、母体が新たな生命を宿す環境にないという事が要因になっ
  
ています。

  
生理は、天体の月の満ち欠けになぞらえて、月経(げっけい)と言われてきました。
  
ひとつきに一度、周期が乱れることなく来るからこう呼ばれたのです。それが25日や
  35
日で来ていては、本来は月経とは呼べないのです。この周期は女性の体の基
  
本的リズムで生命力の指標となるものです。女性の健康は”血の道症”(ちのみち
  しょう)と言われ、昔の人は生理がきちんときているか、周期に乱れがあるかない
  
かで自分の健康を判断していました。いつの時代からか人は生理の周期を気に
  
しなくなってしまいました。生理が20日できたり38日になったりするということは、
  
とても大変なことで、体の危険信号になります。

  
生理の周期に乱れが出るということは、その人に生命力の低下がみられていると
  
いうことになります。生殖機能が低下し、新たな命を宿し育む環境にないということ
  です。生理の時や排卵時に、諸症状がみられるのも、生殖機能が正常に働いてい
  ないということになります。女性の生殖機能には、種の保存を担う大切な働きがあ
  ります。だから本来は生殖機能は丈夫でなければいけません。機能低下が起こって
  はならないのです。子宮疾患や卵巣疾患が起きてしまうことも生命力の低下を意味
  します。免疫力を高く保たなければならない生殖器に破綻がきているということにな
  ります。このような環境では、排卵においても強い新鮮な卵子は排出できず、無排卵
  等の症状も起きやすくなります。母体が新たな生命を宿す環境にないからです。
  
  
妊娠するためには、まず生理の周期を28日から30日の間に安定させていくことが
  必要です。それには2つの機能を元に戻す事です。ひとつは、生殖器官に指令を
  
出す脳幹部の熱のこもりと、脳圧の上昇を抑える事です。もうひとつは、子宮、卵
  
巣の機能低下の根本的要因となっている、血液供給を正常に改善していく事です。
  
このふたつを改善していくためには、全身の血液の循環、配分、質の乱れを整え
  
ていく必要があります。
  
  
脳幹や子宮、卵巣の機能低下は、全身の血液の循環、配分、質の乱れから生じ
  
ます。この乱れを整えていくにはその原因となっている心臓、肝臓、胆嚢(たんのう)
  
の働きを改善していく必要があります。心臓は血液の循環のための大事なポンプ
  
であり、この機能が弱まれば全身の血液循環は乱れてきます。特に心臓より上に
  
位置する頭に血液を上げる力が落ち、脳に血液供給不足(虚血)が生じます。
  
脳内に血液不足が起こると、少ない血液を早く脳内に回さなければならないため
  
脳圧を急上昇させて体は対応します。脳圧の上昇は脳内に熱を発生させていき
  
脳の中枢部にある脳幹に熱をこもらせていくのです。
  
  
肝臓と胆嚢の機能低下は、精神的ストレスの持続と深く関わっています。精神
  
的ストレスの持続は常に脳を興奮状態に置き、脳内の神経伝達物質や脳内ホル
  モンを大量に消費する事になります。神経伝達物質や脳内ホルモンの多くは肝臓で
  
作られ肝臓で分解されるため、この状態の持続は肝臓に負担をかけ、肝臓の機能
  
低下をもたらします。機能低下を回復させようと体は肝臓に血液を集め、熱を発
  
生させます。肝臓に多量の血液がとられる事で、全身の血液の配分が大きく乱れ
  
ていきます。血液の配分の乱れは、さらに脳の虚血と生殖器官、そして全身に血
  
液不足の状態を引き起こします。

  
肝臓の機能低下は、内包する胆嚢の機能低下をもたらします。”肝胆相照らす”
  
と言われるように、肝臓機能が低下すると胆嚢の機能も低下してしまうのです。
  
胆嚢は機能低下を回復させる対応として、充血と熱、腫れを生起させます。胆嚢
  
が腫れる事で、袋の収縮に影響が及び、胆汁の分泌不足が起こります。胆汁には
  
その極めて苦い成分により、体の炎症を鎮め、血液の熱を冷ます働きがあります。
  胆汁が分泌不足になると、血液が熱を帯び(血熱)、熱変性により赤血球の連鎖が
  
起こります。そしてドロドロでベタベタの血液になり、全身や脳内の毛細血管の中の
  
血液の流れに停滞と詰まりを発症させるのです。これは全身及び脳内の血液の循
  
環を遅くし、子宮や卵巣に血液供給不足を起こし、脳内にも虚血を引き起こします。
  熱を帯びた血液は、血液の質を落とし、体の免疫力を損なう大きな要因となるのです。

  
このように、心臓、肝臓、胆嚢の機能低下が全身の血液の循環、配分、質の乱れ
  
の最大要因となっているのです。これが生殖器官に指令を出す脳幹の機能を低下
  
させ、子宮や卵巣の機能低下の根本的原因として作用し、免疫力の低下をもたら
  
していたのです。故にこれを改善するためには、心臓、肝臓、胆嚢の働きを改善し
  
ていくことが必要です。日本伝承医学の治療法は、肝心要(かんじんかなめ)の重
  
要性を認識した日本人が、肝臓と心臓を整える事に主体を置き構築されています。
  
これにより、全身の血液の循環、配分、質の乱れが改善され、脳幹と子宮や卵巣
  
の機能低下を回復させていく事ができるのです。これが生理の周期の安定と、生理
  や排卵時の諸症状の改善をもたらすのです。また体温上昇ももたらします。

  
そしてもうひとつ大事なことは妊娠できる環境を作るためには、低体温を改善して
  
いかなければなりません。35.8度くらいでもあまり気にしない方が多いのですが、
  これはほんとうは大変なことなのです。低体温は生命力の低下を示しているからです。
  
恒温動物と言われる人間は、常に体温を365分位に保っていく事で、全ての生
  
理機能が正常に働くようになっています。体温が365分まで上がらないということ
  
は、体内の基礎代謝能力が大幅に低下していることを意味します。鳥達が卵を孵
  
化(ふか)させるときに、親が一生懸命おなかで温めますが、体温が低いと無事に
  
孵化できずに、赤ちゃんが生まれないからです。人間にもこれと同じことが言えます。
  
  基礎代謝能力とは、呼吸、心拍、体温という、生きていく上で維持しなければならな
  
い基本的な生命維持機能を保つ力を指します。体が365分まで体温を上げられ
  
ないと、体内の全ての生理機能に影響がでてきます。
  
低体温になると、体が温まらず血流が悪くなり、手足の冷えが強くなります。靴下
  を履いていなければ眠れなくなります。夏場は冷房が異常に寒く感じられます。
  
また免疫力が低下するため、風邪を引きやすくなります。そして風邪を引いても
  
高熱を出す事ができないため、なかなか治りません。体は38.2〜38.3度の高熱
  
を出すことで免疫にスイッチが入ります。これによって治そうとする自己治癒力が
  
出てくるのです。だから体が37度位の微熱しか出せないと、風邪の治りが悪くなり、
  いつまでもだるくて苦しい状態が続いてしまいます。
  
  
また低体温だと、貧血にもなりやすく、頭痛や生理痛、肌荒れ、便秘、皮膚疾患、
  
肩こり等も起こしやすくなります。低体温のかたには、免疫力低下の3つの兆候と言
  
われる便秘、肌荒れ、冷え症が多く見受けられます。このように様々な不定愁訴
  
(いつもだるくてなんとなく具合が悪い状態)を表すのが、低体温の特徴になります。
  体温が低くても気にしないで過ごしてしまう場合が多いのですが、この低体温が
  
生命力や免疫力を低下させ、妊娠できる環境を作れないということを、認識してほ
  
しいと思います。
  
  
日本伝承医学の治療法は、骨髄機能を発現させる目的で構成されています。骨髄
  の機能を発現させることで生命力や免疫力を高めていくことができます。
  
生命力とは細胞を新生する力になります。免疫力とは、白血球を中心とした血液
  
全体を生み出す造血する力になります。細胞新生と造血は共に人体の骨髄で行わ
  れています。故に生命力や免疫力をもとに戻すためには、骨髄機能を発現させる
  必要があるのです。この骨髄機能を発現させることができるのが、日本伝承医学
  治療技術になります。日本伝承医学の治療が不妊症に著効をしめすと言われ、
  全国から多くの患者さんが受診されるのには、このような根拠と機序があります。
  
(30代後半から40代にかけての方も多く受診されています)。

  
ここ30年来、子どもができにくい夫婦が急増し、大きな社会問題に発展しています。
  
医学界や厚生労働省からは、この事態を憂慮し子どもができにくい原因を出産の
  
高齢化による"卵子の老化"と言う表現を使って、できるだけ若い時期での出産を
  促すまでになって来ています。高齢化による卵子の老化は真実であり、これは生
  として避けられない、極めてあたり前の現象になります。この意味においては、早い
  時期での出産は奨励されるべきであると私は考えます。ただたとえ高齢でも日本伝
  承医学の治療で、母体の環境を整えていけば、新鮮な卵子を産出する事は充分可
  能になります。これは当院の患者さんで体外授精を併用されてる方がたの臨床検
  査から証明されています。また男性の精子数減少や運動力低下の場合も立証され
  ています。日本伝承医学の治療法が、生命力や免疫力の低下を改善し、全身の血
  液の循環、配分、質の乱れを整える事ができるため、妊娠出産のための根本的な
  条件となる、生理の周期を安定させ、低体温を改善できるからになります。