胃酸過多と逆流性食道炎の本質 2023.5.2.有本政治

 人体の中で食べ物の消化を担っているのは胃と胆のうとすい臓になります。
胃からは胃液が分泌され、胆のうからは胆汁が分泌され、脂肪の消化吸収を助け、
すい臓からはすい液が分泌されたんぱく質と脂肪の分解を助けています。つまり
食べ物を消化吸収するためには、この3つの消化液が必要になります。
 その中でも胃液は胃酸と言う極めて強い酸によって食べ物を分解します。胃液
1日の中で2L2.5L分泌され、1回の食事では約500ccが分泌されます。食べた
物は口から食道を通り胃の袋の中に入り、胃液によってどろどろのおかゆ状に
分解していきます。胃液は食べ物と同時に侵入してきたウィルスや細菌の増殖を
防ぎ、殺菌する役割も担っています。
 胃酸過多はこの胃液が通常より大量に分泌される状態を言い、胃の消化力が低下
し胃酸をより多く必要になった時に起こります。また油っぽい物や刺激物、肉類
等を多く摂取した場合にも起こります。食べた物は通常23時間胃の中にとどま
りますが、肉類等脂肪分の多い食べ物では45時間消化にかかり、分解のために
大量の胃液が必要になるからです。このように胃酸過多は悪い反応ではなく生命
維持にとって必要な対応となります。
 胃液が大量に分泌されると胃内部の内圧が高まり、胃部の膨満を引き起こし、
横隔膜を押し上げ心臓を圧迫します。呼吸困難に陥る場合もあります。体はこれ
を回避する対応として胃の上部の門である噴門(ふんもん)を開き、胃の内圧を抜き、
胃液を逆流させることで胃の膨満を回避しようとします。 
 酸っぱく刺激性のある胃液が食道に上がってきて、のどや口腔内まで達していき
ます。胃のむかつきや膨満感、胃痛、胸やけ、吐き気、気持ち悪さ、げっぷ、
お腹の張り、食物が喉につかえるような感じ、咳、喉の違和感等の症状が起こり
ます。これが慢性的に起こり食道粘膜に炎症を起こす症状を逆流性食道炎と言い
ます
。食道粘膜には胃の粘膜のように胃酸に対する防御機能が備わっていないため、
強い酸性を示す胃酸によって、炎症や潰瘍を引き起こしてしまうのです。
 胃酸過多はストレスによる自律神経の乱れによっても起こります。胃の働きは
自律神経によって調整されているので自律神経が乱れ、交感神経が優位になると
胃酸を過剰に分泌させていくからです。またストレスにより肝臓が充血し(肝臓の
炎症)
肝機能が低下すると、胆汁(たんじゅう)の生成機能が著しく阻害され、
胆汁の分泌低下をもたらします。脂肪の消化に欠かせない胆汁が不足すると消化
酵素を出す、すい臓に大きく負担をかけすい液の分泌低下をも引き起こします。
 すい液が出なくなると胃から出る胃酸を主成分にした胃液を大量に出すことで
体は食べ物の消化を助けようとします。つまり胆汁とすい液の分泌不足が
胃液を
過多に分泌させ対応していくのです。
 以上が胃酸過多と逆流性食道炎の本質になります。
 体は命を守る対応として胃酸過多や逆流性食道炎を発症させているので、薬等
で胃酸を抑える治療を行なってしまうと、ますます食べ物の消化ができなくなり、
体は次なる重篤な対応へと移行せざるを得なくなります。逆流性食道炎を放って
おくとがんへ移行するのではなく、処置してしまうことで最終的にがんへと移行
してしまうのです。
 症状を改善していくには、まず肝臓の充血(炎症)をとり去り、肝機能を上げ、
胆汁不足を補うことが不可欠となります。胆汁が生成されればすい臓にも負担が
かからず、胃の機能をとり戻すことができます。
 日本伝承医学では回復を図るために、胃液、胆汁、すい液の3つの消化液の分泌
を元に戻す治療を行なっていきます(胃の操法、肝胆叩打法、すい臓調整法)また
自律神経調整法を用い、自律神経の乱れを整え胃酸の過剰分泌を抑えます。
肝胆冷却とすい臓冷却の家庭療法を合わせて行なうことで炎症を除去し、病状を
改善していきます。


  ≪参照文献≫  有本政治:著

            「逆流性食道炎の本質

            「がんを捉えなおす」