春先(12)に体調を崩しやすい理由 2023.2.4. 有本政治

漢方医学の功績のひとつに時間(季節)と内臓との関係性があります。春・夏・
秋・冬の中で、春は肝臓と胆のう(肝胆)が活発に働く季節と位置付けられて
います。つまり春は肝臓と胆のうが活発に働くことで体調が維持されるのです。

しかし、現代人は睡眠不足を背景に、目と脳の酷使、価値観の多様化から
生じる人との摩擦等様々な精神的ストレスの持続から、ほとんどの人に慢性的
な肝胆機能低下が見受けられます。その為本来春先に働かなければならない肝胆
が活発に働くことができません。体は肝胆機能を回復させようと働き、大量の
血液を送り込み、熱を発生させ、機能回復を図ろうとしていきます。故に春を
迎える前の1月頃から肝臓胆のうに充血、炎症が起きてしまうのです。

肝臓には人体中の血液の約4分の1が集められています。それにも増して1
から機能回復のために大量の血液が肝臓に集まるので(肝臓の充血・炎症)
全身の血液の配分が大きく乱れていきます。血液配分が乱れることで血液不足
の個所が生じます。頭に起これば(脳の虚血)、頭痛、めまいになり、心臓に
起これば動悸、狭心症、心筋梗塞等の症状となります。症状はその人のもつ
遺伝的に弱い部分に現われます。

胆のうは肝臓の下面にあり、この二つは漢方医学では表裏(ひょうり)の関係
にあります。肝臓が充血することで胆のうにも負担がかかり、充血、炎症、腫れ
が起きます。胆のうという袋が腫れて収縮作用が低下し、胆汁(たんじゅう)
分泌不足が生起されます。胆汁は脂肪の分解吸収を助ける消化酵素のため、脂肪
が未消化となり、下痢や便秘、気持ち悪さ、吐き気等が発症します。
また苦い胆汁には、体内の炎症を鎮め血熱(血液の熱)を冷ます苦寒薬としての
大事な働きがあります。胆汁分泌不足による血熱は赤血球同士の連鎖と変形を
生じさせ、ドロドロベタベタの血液にし、体内の毛細血管の流れを停滞させ詰ま
らせ、脳梗塞、心筋梗塞等を誘発させる要因になります。体は毛細血管内の血流
を促進させようと心臓ポンプに負担をかけ、心臓の機能低下をも引き起こします。
上記の機序により、病気や症状の直接的要因となる全身の血液の循環・配分・質
に乱れが生じてくるために、12月期に体調をくずしやすくなるのです。

≪参考文献≫ ホームページ院長日記2017.1.18
         何故、春先(12月期)に肝臓、胆嚢が機能低下しやすいのか』
     
         日本伝承医学と漢方医学との関連性』著:有本政治
                   発行日:200498
              発行:有限会社日本伝承医学研究所