「がんを捉えなおす」おわりに



 「がんを捉えなおす」と題して、がんの発生の根拠と機序を解読し、その
対処法を提示し、生命力を高め、がんの自然良能を促進する家庭療法を
紹介してきました。
 生物は、その生をまっとうできるように「生へのプログラム」が設定されて
いるという原理に照らして、論を進めてまいりました。これが“天然態”とし
ての生物の真の姿でありましょう。この観点に立てば、病気が個体を死な
せることをするはずがありません。すべての病や症状は個体を死なせるこ
とを目的にしているのではなく、生かそうとしている姿なのです。
 病気を捉えなおす作業を始めて約20年が経ちました。その集大成として
の作業が「がんを捉えなおす」という今回のテーマであります。がんも病気
の一形態でありながら、死の病、不治の病として、恐れられ、悪の権化の
ように認識されています。がんを発見された場合の対処法は一律に、がん
細胞を根こそぎ取り去る外科手術、制がん・抗がん剤放射線等で徹底的
に殺してしまうという方法がとられています。稀に免疫療法、その他の療法
も試みられますが、これ以外の選択肢はほとんどないのが実情です。


 はたしてこれが最良の選択なのでしょうか。患者さんや家族のかたの中
にも、釈然としない思いで、迷いながら外科手術及び抗がん剤治療を選
択されるかたも多数いらっしゃるものと推測されます。このがん治療の中
に新たな選択肢を提供したいという思いで、この「がんを捉えなおす」とい
うテーマを完成させました。
 正直なところ、この論は「総論了解、各論未整理」の段階ではあります。
その段階での提示は、はなはだ遺憾に思うところも多々ございます。
しかし、急がねばという思いが先行したのも事実です。こう考えている瞬
間にもがんで命を絶たれるかた、戦々恐々とした思いで生きられているか
たがたが大勢おられるのです。
 総論としてのがんへの捉え方はほぼ完了しています。新たな選択肢を
提示すると言うことは、がんに対する認識を根底から変えていかなけれ
ばなりません。“自然良能”の道を選択していただくためには、がん発生
の根拠と機序を明確に示す必要があります。


 この「がんを捉えなおす」の解説の中からがんに対する認識を新たにし
ていただけるきっかけになれば幸いです。そして、がん治療の選択肢の
中のひとつとして加えていただければ、とせつに願います。わかりづらい、
つたない解説は、いずれ項目を改め、より進歩した形で提示する所存です。
 “生きる”“生きている姿”とは内外の環境変化に、時々刻々変化対応し
ていく姿であります。この変化対応は、生をまっとうしようとする正への対
応の方向性であることを私たちは忘れてはならないのです。

                      2003.11.19


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