日本伝承医学の疾病観



 「がんを捉えなおす」はじめに



 がんという病気は、最も恐れられ不治の病、死の病、つまり悪の権化と
いうイメージで一般的には捉えられています。
しかし命というものを根底から見直し、がんの本質を正しく理解すれば、
今まで見えなかった側面、真の姿が浮き彫りになってくるのです。
 がんに対する認識をあらたにし、その予防法・対処法を提示することで
現在行われているがん治療の選択肢の中に、もうひとつのあらたな選択
肢を提供できるものと確信しています。
 「がんを捉えなおす」というこの試みが、今、力強く生き抜こうとしている
かたがたにとって、一筋の光明とならんことを願って、この論は書き記し
ていきたいと思います。


 がんに対する認識をあらたにしていただくためには、まずがんに対する
偏見を取り除いていかなければなりません。偏見とは、偏ったモノ・コトの
見方です。モノ・コトには一方的ということは存在しません。表があれば裏
があるように、自然界や社会を貫く法則は、すべては正・反の二面性を有
しているという事実です。
 悪の権化と思われているがんも、正・反の二面を有しているという視点
で捉えなおしてみると、今までまったく見えなかった面がみえてくるもので
す。この視点に立って、「がんを捉えなおす」というテーマは展開していき
ます。
 結論的にいえば、がんという病は、命を存続させるための最終的な対
応の姿ということになります。最終的な対応ということは、その前段階と
して、何段階もの命を守る対応の形が、人体に“症状”としてあらわれて
くるということです。


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