大動脈石灰化
 大動脈は心臓から出て全身に血液を送る太い血管になります。
大動脈石灰化は、血管の平滑筋細胞が骨を作る細胞(骨芽細胞様
細胞)へと変性して、骨のような組織を作り出してしまう現象を
指します。
 大動脈壁の内側にカルシウム等を沈着させ血管の柔軟性や弾力
性を失い硬くさせます。本来大動脈はゴムのようにしなやかで弾
力性がありますが血管壁が傷つくと、修復過程で石灰化していく
のです。初期から中期の段階では自覚症状がなく、胸部X線検査
CT検査で見つかる場合がほとんどです。
【石灰化は修復するための対応の姿】
 大動脈の石灰化は、血管が破壊されて破裂するのを防ぐための
最終対応になります。
 加齢や高血圧、脂質異常症、胆汁の分泌不足等によって血管壁
に慢性的炎症が起こると、血管の構造がもろくなり内側からの血
圧に耐えられなくなります。体はもろくなった部分にカルシウム等
を沈着させて固めることで、血管壁の強度を保ち破裂を防ごうと
します。
 大動脈石灰化と診断されると怖くなりますが、このように正の
対応の視点からみていくことが大事です。不安感や恐怖心は瞬時
に肝臓を充血させ、交感神経を緊張状態にし、体をますます悪化
させていきます。
 健康診断の結果による不安が過度に交感神経を緊張させ体調不
良を引き起こしてしまうケースがあとを絶ちません。体に起こる
症状は悪ではなく、体が懸命に生きようとしている対応の姿なので、
まず今の状況を受け入れることです。
【石灰を溶かすと良くない理由】
 石灰化が起きている大動脈の壁は、もともと慢性的な炎症によ
って弾力組織(土台)が傷ついて脆くなっています。そこにカルシ
ウム等を沈殿させて固めて補強しているのに、石灰化だけを薬剤
で溶かしてしまうと脆(もろ)い血管壁がむき出しになってしまい
血管の壁が破裂したり大動脈解離等を引き起こすことがあります。
つまり石灰化は溶かすのではなく、これ以上広がらないように
現況を維持していく必要があります。
 現代医学の治療においても、石灰化は溶かすのではなく進行を
抑える治療法が標準化されてきました。
【石灰化は溶かすのではなく進行を抑える】
 以前は石灰化を溶かす治療法(EDTAキレート療法)が主流でした
が、石灰化を溶かすと大動脈解離、急性心筋梗塞、急性心不全、
腎不全、低血圧・ショック状態等の危険が生じたため1980年代後
半から、溶かすのではなく進行を抑える治療法に転換されました。
石灰化は病変を固めて保護する、かさぶたのような役割を果たし
ているため、無理に溶かすと血管壁が破裂する危険が生じるから
です。
 石灰化は単なるカルシウムの沈殿ではなく、血管の細胞が骨の
細胞のように変化してカルシウム形成する能動的な反応になります。
そのため溶かすのではなく、細胞の変性を防ぎ、現状を維持しな
がら進行を抑える治療法へと変わってきたのです。
 現代医学でも、病状を単なる除外すべき悪としてみるのではな
く、体が生き抜くために引き起こす対応プロセスとして捉えるよ
うになってきたのです。
【胆汁の分泌不足が血液に熱をもたせる】
 胆汁(たんじゅう)には血液の熱を冷ます役割があります。
ところが胆汁が分泌不足になると血液に熱(炎症)が帯び、血管
壁に慢性的炎症が生じます。慢性的炎症が続くと血管壁が脆く
なり、体は石灰化させて壁を守ろうとします。
 石灰化をこれ以上拡張させないためには、血液の熱を冷ます
必要があります。
 まずストレスや疲労で充血している肝臓の炎症を除去し、肝臓
に内包している胆のうの働きをとり戻し胆汁の分泌を促します。
 日本伝承医学では肝胆の叩打法、胆汁の分泌を促進する操法を
用います。脳の炎症を除去するために、自律神経調整法、後頭骨
擦過法も用います。また慢性的炎症を除去するためにはアイスバ
ッグを用いての肝臓胆のうの局所冷却法も重要です。
【脳の炎症が血管壁に慢性的炎症を及ぼす】
 疲労や心労(ストレス)が続くと脳内に炎症が起きます。脳の
炎症は自律神経を司る領域を侵し、交感神経を優位にさせストレ
スホルモンを全身に放出します。
 ストレスホルモンは血管を細く収縮させ心臓から勢いよく血液
を送り出すため、血管の一番内側にある内皮細胞に強い応力(摩擦)
がかかり血管壁を傷つけます。その傷を治すためにサイトカイン等
の炎症物質が集まります。心労や過労が改善されない限り炎症物
質が鎮まらず、慢性的炎症と化していきます。
 つまり血管の石灰化の要因である血管壁の慢性的炎症は、疲労
や心労による脳の炎症が起因しているのです。脳の炎症を除去す
るためには家庭療法としての頭部冷却法が有効になります。
≪参考文献≫ 「日本伝承医学の家庭療法~局所冷却法
  著:有本政治