細胞の中にCaが非常に少なくて、Caについてはほとんど真空状態ともい
えるのは、けっしてカルシウムがたいせつでないからではなく、むしろその
逆で、細胞の中にわずかしかCaがないので、外にたくさんあるCaが、少し
でも細胞の中に流れ込んでくるとたいへんなできごととして感じられる。つま
り情報としての価値が高いことを意味しているのです。人体の生理機能が微
量のホルモンという情報によって機能するのと同じです。また、細胞に電気
というエネルギーが流れるのも、このような大きな濃度差に基づく現象のひ
とつであります。
細胞膜を流れる電気は、0.2ミリVから数ミリVという微弱なものと思われて
いますが、1ミクロンの何分の一という非常に薄い細胞膜を建物の壁くらい
の厚さくらいに計算しなおして、その電位差を見積もると何万ボルトというこ
とになって、小さな細胞が非常に強い電気をつくり、これを流していることに
なります。
生命のエネルギーは、そのくらい強いものなのです。細胞のエネルギーで
あり、情報源である電気も細胞の内外のカルシウム濃度に差があることで、
強く発生して、これをはっきり認めることができるのです。このために細胞の
働きは、細胞の外に一万のカルシウムがあって、中にたったひとつのカルシ
ウムがあるという大きなカルシウムの落差があって初めて機能するものなの
です。
このように考えてみますと、カルシウムという物質は、単なる物体ではなく
情報としての作用、エネルギーとしての作用という「物質・情報・エネルギー」
すべて兼ね備えた物質として捉える必要があるのです。
その総元締めは、人体のカルシウムの99%を貯蔵し、必要に応じて血液
にCaを溶出する“骨”であり、骨が「生命のしくみ」となる「物質・情報・エネ
ルギー」の要(カナメ)として作用することは、十分にうなづけるものです。
血液と細胞間のCa濃度一万対一の関係は、血液中の成分であります
赤血球、白血球、血小板においても同様です。赤血球の外と内は、Ca濃
度が一万対一に常に保たれないと赤血球の役割をまっとうすることができ
ません。免疫作用の主力であります白血球においても同様です。血液の
凝固作用をもつ血小板も同様です。