カルシウム(骨)は生命活動の要



 骨の主成分であるCa(カルシウム)に焦点をあてて、現代生理学が解
明している体内カルシウムの作用を、日本伝承医学の技術と関連づけな
がら解説してみたいと思います。
 体内のCaの濃度を一定に保つ作用をCa濃度恒常性維持機構(ホメオ
スターシス)と呼び、生命活動を維持する上で、絶対に維持しなければな
らないたいせつな機構です。
 Caは私たちの体の中で、いくつかの部屋に分かれて存在しています。
その中でも骨は人体のカルシウム99%を貯蔵しています。カルシウムが
不足すると骨がもろくなることは良く知られています。
しかし血液の中にいつも、一定濃度のCaが含有されていて、これが身
体のすべての働きを支えていることや血液の中のCa濃度が少しでも変
わると、私たちはたちまち病気になってしまうことは、まだよく知られてい
ません。
 また私たちの身体をつくっている70兆に及ぶ細胞は、細胞外と細胞の
内のCa濃度を一万対一に維持しないと、細胞のすべての働きが停止し
てしまいます。


 Caは受精という生命発生から心臓の拍動、筋肉の収縮、神経による
伝達作用、ホルモンや抗体の生成や分泌にいたるまで、私たちの生命
を支えるすべての営みがCaによって行われているのです。このCa濃度
のバランスがくずれることで、すべての病気が発生するのです。
遺伝病、感染症、高血圧、心筋梗塞、脳循環障害、目、耳の病気から、
がんにいたるまで、結局細胞のCaバランスの異常によるものなのです。
人体のすべての生理機能の低下はCa濃度のバランス異常といっても過
言ではありません。
 漢方医学でいう“腎虚”の状態とは、Ca濃度のバランス異常をさしてい
ます。当然免疫力とも大きく関わっています。極言すれば、病気治し
の根本は、体内のCa濃度のバランス異常を正常にもどすことであるとい
ってよいでしょう。これは漢方医学における“補腎”に相当する概念として
位置づけられるものです。
ある一例をあげてみましょう。

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