身体のすべての生理機能は、血液の「循環・配分・質」によって維
持されています。心・肺機能が弱いタイプの人は血液の“循環”“質”
が低下しやすくなっています。これがまずベースにあり、後天的な精
神的ストレスの持続により、人体中最大の臓器である肝臓に充血・炎
症が引き起こされていきます。肝臓に血液の多くを取られてしまうと
全身の血液の“配分”を大きくみだしてしまうことになります。
これは上記した血液の「循環・配分・質」のすべてを低下させること
になります。そうすると他の組織・器官に血液不足を生じさせます。
 肝臓という臓器は“沈黙の臓器”といわれ、充血していても自覚症
状のあらわれにくい臓器です。肝臓に血が多量に集まるということは
他の臓器からも血液を奪うことになります。当然となりの胃からも血
液が奪われ、胃に血不足が起きてしまいます。胃の血不足は胃炎を起
こし、それが悪くなると胃潰瘍を発生し、穴をあけることによって、
熱を排出させていきます。これが胃潰瘍という病気の本態になります。
このように病気を全体との関連の中で、とらえていく考え方が漢方医
学の大きな特徴となっています。胃潰瘍を胃だけの単品の病気として
みて、対処しても根本的には何の解決にもなりません。
 現代医学を象徴的に表現するならば、「氷山の一角」ということわ
ざが当てはまります。水に浮いている氷は一部を水面上に出していま
す。これだけを見ていては、全体像はけっしてわかりません。氷全体
の大部分は、水面下にかくされています。この全体と部分との関連が
見えなくなってしまっているのが現代医療です。各種検査で映像や数
値に示されるものだけが病気の本態ではありません。季節の移り変わ
り、時間の経過の中で病気をとらえ、生活習慣、精神的作用を含めて
総合的に多面的、高次元に病気をとらえなおし、根本的要因から改善
させていくことが大切です。

次のページへ

もどる