臓腑を中心に考えられた医学


 日本伝承医学では骨を生命活動の中心をおいているのに対し、漢方
医学では内臓にその中心をおいているのが特徴となります。内臓は六
臓六腑といわれるように十二種類で構築されていますが、中でも五臓
を中心に、組織、器官との関連を説き、すべての生理機能と結びつけ
ています(古代日本人は、心臓を中心にとらえていました)。さらに精
神感情の乱れを七種に分類し、それぞれを内臓との関連性の中で説い
ています。また季節の変化、一日の時間と内臓との対応も解明してい
ます。これらすべてを体系的に有機的に結びつけているのが漢方医学
となります。
 具体的に例をあげて解説してみます。 
五臓とは肝臓、心臓、脾臓、肺臓、腎臓をさしています(これに心包
を加え六臓とします)。また腑とは胆のう・小腸・胃・大腸・膀胱・
三焦をさします(腑とは、中空、中身のつまっていない臓器をさし、
子宮も腑に含まれます)。臓腑は肝⇔胆、心臓⇔小腸、脾⇔胃、肺⇔
大腸、腎⇔膀胱という表裏の関係で結ばれています。胆のうは、肝臓
の裏の関係に当たり、肝機能の低下は胆のう機能も低下につながると
いうことです。臓腑論においては、五臓を主体に他の臓器との関わり、
時間、精神感情との関わりを説いています。
 代表的なものをあげてみますと、「肝」は春の季節と関わり、木の
性質をもっています。一日の時間との対応は、夜の1時から3時の間に
配当されています。肝機能の低下は、まず第一に「目」の症状として
発現し、頭痛、めまい等と関わります。腫眼、筋肉のつれ、爪に症状
をあらわします。色は青に配当され、味は酸味と関わります。精神感
情との関係は「怒」「イライラ」と関わっています。
 以下簡略化して列挙してみますと、「心」は「夏・火の性質・11〜13
時・舌・面・喜・動悸・息切れ」と関わります。
「脾」は「土用・土の性質・9〜11時・唇・思・胃腸症状・湿」と関わりま
す。「肺」は「秋・金の性質・鼻・3〜5時・白・悲・咳・皮膚病」、「腎」は
「冬・水の性質・17〜19時・耳・驚・恐・苦・黒・身体のだるさ」等と関
わっています。

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