捻れは病の根拠と機序



 身体に捻れた歪みが発生すると、それがどういう機序で、内臓、関節、
筋肉、腱、じん帯、神経に、また脳(こころ)に影響していくかを考察してき
ました。人体バナナ理論と称して、「すべては捻れから始まる」という視点
は、生命観、人体観、疾病観ひいては人生観までをも変えうる、重大な示
唆を私たちに与えてくれています。人間が心身ともに健康でいられ、社会
に適合する上にも、基本となる考えかたであります。「ローマは一日にし
てならず」 同様に“病は一日にしてならず”なのです。
 心身に起こった“捻れ”が徐々に心身をむしばみ、時間の経過の中で、
病は起こるべくして起こっていくのです。それに気づかないだけなのです。
 外見からではわからないバナナの中身が腐りかけた状態がみつけられ
ないのです。当然、生物としての人間は、手をこまねいているわけはあり
ません。初期の段階から、警告のためのサイン(兆候)を何段階かにわけ
て発しています。生き抜くために当然の警報システムを備えているのです。


 具体的に列挙してみますと、まず筋肉のコリ(凝り)として、肩のコリ、首
のコリ、首の痛み、背中のコリ、痛み、腰痛としてサインを発します。
俗にいう肩コリ、腰痛は単に部分的な問題ではなく、重大な警告反応な
のです。上肢(肩・肘・手・指)や下肢(肢・膝・足・趾)におこる、不可抗力
以外のすべての痛み疾患も警告システムの一環として捉えてもよいでし
ょう。順序としては、コリ感から始まり、痛み、シビレ、運動障害、マヒへと
徐々に移行していきます。そしてついには、内臓に及び内臓の機能低下
は、病名診断へと移行していくのです。
 まさに、”病は一日にしてならず”といえるように、病のすべてにおいて
「根拠」と「機序」は存在するのです。この病の根拠となり、機序となるの
が、実は心身に起こった“捻れ”にあったのです。
 “捻れ”という現象は、心と身体に大きく影響を与え、病の“根拠”となり
進行していく“機序”として、大きな作用力となることを認識していただきた
いのです。
 日本伝承医学は、このヨリ(捻れ)を戻すということを身体の歪みの修正
の基本と考え技術を構築しています。「ヨリをもどす」ということは人間が心
身ともに健康でいられる上での“神髄”ともいえるのではないでしょうか。


                               2003.9.17

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