次にスポーツ障害の中で、高い比率を占める膝の障害について考えて
みましょう。
 膝という関節は、下肢という長い棒状の中間にある関節です。長い棒
状の下肢全体に捻れが生じますと、股関節は骨盤と連結しているので、
一番下にある足関節は地についている関係から、中間に位置する膝関
節に捻れの応力が一番加わりやすくなっています。
 膝関節は、捻れを防止するために、内部に十字じん帯という交差する2
本のじん帯を有しています。また、内側と外側に横揺れを防ぐために、そ
れぞれ強固な側副じん帯をもっています。また半月板という、ディスク状
の軟骨が内・外側にあり膝の伸展、屈曲時に前後にスライドする複雑な
仕組みをしています。
 このような構造をしている膝関節に捻れの応力が常にかかった状態が
続くと、捻れを防止するためにクロス状に連結している十字じん帯の片方
に、常に張力を生起し、逆に片側のもうひとつの十字じん帯はゆるみをも
った状態を作り出すことになるのです。また、内外側の半月板は、膝関節
の捻れのために、本来の前後へのスライドが円滑に行えない状態を呈し
てきます。横揺れ防止のための内外側の側副じん帯も、片側に常に張力
を作り、片側にたるみの状態を作り出すことになるのです。


 このような状態がすでに起こっているじん帯・半月板は、何度も述べて
ありますように疲労し、正常な状態ではありません。故にわずかな“引き
金”によって、じん帯断裂半月板損傷を引き起こしてしまうのです。
 特に女子のバスケット選手に多い、十字じん帯断裂は、練習中や試合
中に急激なストップやターンをしただけで断裂を起こしています。これは
大きな外力が加わっているわけではなく、自らの走行中に起こっている
のです。
  この程度の負荷で、じん帯が簡単に切れるわけがありません。まして
や運動選手は、一般人と違って筋力を相当鍛えているにもかかわらず、
このような障害が頻繁に起こっているのです。
 半月板や側副じん帯の損傷も同様のケースは多々見られます。これら
の最大の原因は、実は膝関節に起こっている“捻れ”だったのです。


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