喘息(ぜんそく)

 私は幼稚園の頃から喘息だった。中学の頃から頻繁に発作が出るようになっ
てメプチンという気管支拡張剤を使い始めた。その頃はまだ、メプチンがこわ
いものだとは知らなかったから、平気で使っていた。苦しくなればメプチンがあ
るからだいじょうぶとお守り代わりに持っていた。
 18歳くらいからだんだん発作がひどくなって、メプチンを吸入しても発作が止
まらなくなってしまった。気管支拡張剤を使いすぎたんだと思った。19歳のとき
の5月、発作で倒れて意識不明になって救急車で運ばれた。
 そこの病院ではセレベントという吸入ステロイドの気管支拡張剤が出た。これ
はパルミコートという、予防のための吸入ステロイドと一緒に使うものだった。
「メプチンは危険だからうちではセレベントを出しています」と先生が言った。
私が今まで使っていたのはなんだったのだろう。危険なものを、ばかみたいに
信じて使っていたんだ。くやしかった。セレベントも信じられない。
 セレベントはまだ新薬だという。インターネットで調べてみたら、アメリカでは
セレベントの常用で死んだ人が何人もいて、裁判が起きていた。セレベントの
危険性が載っていた。これから赤ちゃんだって産みたいし、体によくないのだか
ら、妊娠したら赤ちゃんにもよくない。絶対やめたいと思った。
 でも夜中になると毎日発作が起きた。苦しくて息ができなくなった。今日はセレ
ベントをやらないと思っても、苦しくて我慢できなくて結局吸った。セレベントを吸
うと7〜8分で呼吸がうそみたいにらくになった。何度もその繰り返しだった。
 どこかで何か変えていかないと治らない。あせった。
日本伝承医学の治療を受けて、講座にも出て体の勉強をした。アイスバッグで
冷却すること、呼吸法、温冷湿布法、いろんなことを教わった。アイスバッグを
いつも持ち歩いて、首やのどや肺や心臓や苦しくなると全部冷やした。
 8月からは治療と併用して漢方薬を飲み始めた。喘息に効くという何種類もの
薬草を毎日40分かけて煎じて飲んだ。セレベント以外なら、なんでもいいから
効くものがほしかった。飲んだその日から、発作が止まった。でもまたくるような
気がして、夜中になるとこわくて目が覚めた。でも発作は起きなかった。
 2か月間飲み続けたあと、薬草の中でも麻黄という強い作用のあるものを抜
いて配合してもらうように私は頼んだ。麻黄をぬいても、だいじょうぶだった。
 12月から一日2回飲んでいた漢方薬を1回に減らした。2〜3日に1回に間隔
をあけて、それから1週間に1回に減らしていった。
もうだいじょうぶだ、2月9日に最後の漢方薬を飲んだ。

 これは気管支ぜんそくの患者さんとの9か月に及ぶ歳月の記録の一部になり
ます(記載文は彼女のホームページからの抜粋)。赤ちゃんを産みたいから気
管支拡張剤をどうしてもやめたいという彼女の強い意志の中、取り組んだ9か
月でした。出会ったとき、彼女の体はまるで麻薬中毒患者のように薬づけでぼろ
ぼろになっていました。
 ぜんそくは発作をただおさえることに主眼をおくのではなく、その原因となって
いる心臓や肺の機能を高めて、発作が起きない体を徐々にとり戻していくことが
大切です。
 私たちの体は息を吐くことで、はじめて息を吸うことができます。元来心臓と肺
の機能の弱い人は、息を吐き出す力が弱く、せきをすることによって肺を鼓舞さ
せて、なんとか息を吐こうとしていきます。せきこむことによって、息を吐き、少し
でも早く新鮮な空気を吸い込もうと、呼吸を自己調整しているのです。
 また心肺機能の弱い人は、体が右ねじれを起こしていきます。体を右にねじる
ことによって、心臓からの血液の噴き出しを守り、早く全身に血液を循環させよ
うとします。しかし体にこうしたねじれが生じてくると、横隔膜の動きが悪くなって
しまいます。
 横隔膜は肺の下に位置していて、肺の機能を助け、呼吸と密接な関わりをも
っています。息を吐く事で横隔膜は上がり、吸う事で下がります。でも体がねじれ
てしまうとこの横隔膜が正常に動かないので、呼吸をするのが苦しくなります。
また横隔膜は肝臓と接触しているため、悩みや心労等で肝臓が肥大してしま
うと、横隔膜の動きが制御されていきます。すごくショックなことや、いやなことが
あると、いっきに息苦しくなって呼吸困難に陥ったり、過呼吸になるのはそのた
めです。息苦しくなったり、発作がおきたりするのは、単に心肺機能の問題だけ
ではなく、このように肝機能とも深い関わりがあったのです。
  体にとって大事なものは壊れないように守られています。脳はとても大事だか
ら、頭蓋骨という頑丈な骨の中にすっぽり入っています。心臓や肺も大事だから
肋骨という鳥かごのような骨の中に包まれて守られています。体は生まれながら
にして、その人の命を守っていくようにできているのです。
 体に起きる症状も同じです。せきが出るには出る理由があり、発作が起きるの
には起きる理由が存在しています。そのことが少しでもわかっていけば、どんな
ことがおきてもだんだん恐くなくなるし、自分の身に起きている症状を受け入れら
れ、自然に共存できるようになっていきます。
 先天的に心肺機能の弱かった彼女は、気管支ぜんそくだけではなく、アトピー
体質でいつも肌がただれて赤くなっていました。化粧で肌を隠すのではなくて、
体を内面から治してあげられるメイクセラピストになりたいと言っていました。

                   2006年 2月.      内田 多美子
 H.P. 化粧療法〜
 私は18歳の時から喘息がひどくて気管支拡張剤を手放せなかった
 でも薬は体を治すのではなく逆に体をこわしていくということを思い知った
 ぜんそくは発作を薬でとめるのではなくて
 弱った心臓や肺の機能をあげていくことが大事だと知った
 にきびや湿疹も必要があるから出ているのだから
 それをステロイドで消してしまうと体によくないということを知った
 顔にできるいろんなものは表面を隠すだけではだめなんだ
 弱った肝臓をもどして中から治していかなければいけない
 気管支ぜんそくになって苦しかったこの9か月間
 メイクセラピーと日本伝承医学の授業に出て
 化粧のことだけじゃなくて体のことや心理学や治療方法や
 いろんなことを勉強してきた
 こんなに勉強したことは、今まで一度もなかった
 まちがっていたこと、知らなかったことが自分にはいっぱいあった
 私はみんなに元気になってもらえるようなメイクセラピストに絶対なる