胆のうから分泌される胆汁は、単なる消化酵素の役目を担うだけ
でなく、体の体液・血液の成分濃度、熱を調整し一定に保つ作用が
あります。
また、胆汁には苦寒薬(くかんやく)として、体液・血液の熱をとる
作用があります。苦寒薬とは、漢方薬の主体となるもので「良薬(りょ
うやく)口に苦(にが)し」といわれるように、苦い生薬(しょうやく)を用
いることで、体内の炎症や内熱を取り去り、体の機能を回復
せていきます。つまり胆汁は、この苦寒薬と同様の体液調整作用を
担っています。
 もともと遺伝的に心臓が弱い人は、肋骨の3,4,5番の働きが悪
く心臓部に熱がこもりやすく、心臓部から噴き出す血液にも熱を帯
びやすくなります。それがこの夏期の猛暑により、体全体が温めら
れ、ますます血液に熱をもってきます。この血熱(けつねつ)を取り
去ろうと体内は胆汁の分泌をさかんにしていきます。苦い胆汁を出
し、熱を処理しようと働くのです。血液に混ぜて、熱を下げようと
するのですが、胆のう機能が弱い人(心臓機能も低下している場合
が多い)は、この胆汁の分泌がうまくいかず、胆のう機能をあげるた
めに、胆のうに熱を発生させて懸命に働きます。熱の発生は胆のう
に炎症を起こし、胆のう肥大を引き起こしていきます。このような
理由から夏の猛暑時に胆のう炎を起こす人が多くなります。さらに、
胆のう炎がひどくなると、人体は、この熱を処理しきれなくなり、
胆のう、当該部に帯状疱疹を発生させ、熱を体外へすてる手段をと
っていきます。また、心臓本体も、熱を除去するため、口角炎も起
こしやすくなります。
 さらに血液に熱がこもってくると、この血熱を取り去ろうと、人
体は胆汁だけでなく、すい臓のすい液までも総動員し、体液を変え
ていこうとします。体液、血液の働きを守り抜こうとするのです。
 夏は心臓の季節と言われるように、元来、心機能の弱いタイプの
人はこのような観点から胆のう機能も弱り、すい臓にまでも機能低
下を生じさせていきます。胆汁というのは、肝臓で生成されるため、
胆のう機能が弱れば、必然的に肝臓の機能も低下していきます。
人体とはこのように、その部位だけが単独で働くのではなく、すべ
て他との関連性をもって、生命活動を営んでいるのです。

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《胆汁の概念》〜胆のうをとらえなおす