≪僧帽筋と胸鎖乳突筋の話≫

※僧帽筋と胸鎖乳突筋は、筋肉の中でも唯一、脳神経の支配を受けている
   大事な筋肉になります。

(1)僧帽筋

僧帽筋(そうぼうきん)は脳へ血液を送り込む働きを司る大事な筋肉になります。
この筋肉が固まると、心臓、脳、肺、肝臓(胆のう)等の機能が低下していき
ます。僧帽筋は、脳神経のひとつである副神経の支配を受けています。つまり
精神的ストレスや悩み、心労等が生じると、この筋肉は固まってしまい、首や
肩のコリ、痛み、背中や腕の痛み、しびれ、麻痺、頭痛、めまい、息苦しさ、
脳障害等の様々な症状を発症していきます。

(2)胸鎖乳突筋

胸鎖乳突筋は頸部(けいぶ)にあり、後頭部から鎖骨にかけてつながっています。
脳神経のひとつである副神経の支配を受けている筋肉になります。首を曲げた
り回転させる働きがあります。胸骨と鎖骨を起始とし、側頭骨の乳様突起が停
止となります。この胸鎖乳突筋が固まってしまうと鎖骨の動きが阻害され、
首が回らなくなったり、腕が上がりにくくなります。連結している胸骨と肩甲
骨の動きも阻害されてしまうので、胸苦しさや息苦しさ、めまいや頭痛、しび
れ、麻痺、脳障害、不眠症等を発症させていきます。

 

【僧帽筋は3つの部位に分けられる】

僧帽筋は首から肩甲骨のあたりまで走っている大きな筋肉になります。とても
大きな筋肉なので上部・中部・下部の3つに分けられています。この3つは
それぞれ異なる働きをします。

 

僧帽筋上部・・・肩をすくめる動きや首を下に向ける動きに関わっています。
        後頭骨から頸椎棘突起、鎖骨に付着していて、頸部()を動
        かす主動作筋になります。

僧帽筋中部・・・肩甲骨を後ろに引くときに使われる部位で、深呼吸をする時
        に胸を張り、肩甲骨を寄せる時に使われます。胸椎上部の
        棘突起の腱膜から肩甲骨の肩峰に付着しています。 

僧帽筋下部・・・物を引き寄せたり引っ張る時に使われます。胸椎中間(第4
 胸椎)から下部(第12胸椎)の棘突起から肩甲骨肩甲棘に
 付着しています。

 

【僧帽筋と胸鎖乳突筋はなぜ固まりやすいのか?】

私たちの体の中で首と肩は最も可動域が大きい関節になります。この部位に深
く関わるのが僧帽筋と胸鎖乳突筋になります。首や肩は重い頭や腕を支えてい
るので、この部位の筋肉は常に緊張にせまられています。

その上、肉体的疲労や様々なストレスを受けることによって、余計に緊張し固
まっていきます。特に精神的ストレスの持続は肝臓を充血させ、血液の循環・
配分・質を乱すので良くありません。血液が充分に行きわたらなくなり、筋肉
が萎え柔軟性を失ない固まってしまうからです。

肝臓の充血は内包されている胆のうの機能をも低下させ(胆のうの腫れ)、胆汁
(たんじゅう)の分泌不足を引き起こします。胆汁は血熱(血液の熱)を除去する
働きがあるので、胆汁が分泌不足になると血液がどろどろでべたべたの状態に
なり、血液の流れ(血流)が悪くなります。血流が滞ると身体にしびれや麻痺、
違和感、関節の痛み、関節の変形等の症状を発症させます。

 

【精神的ストレスとは】

私たちは生きている限り様々なストレスにさらされています。悩み、不安感、
心配事、嫌な出来事、あせり、極度の緊張感、悲しみ、不快感、怒り、騒音、
悪臭、公害等はストレッサーとなり、瞬時に肝臓を充血させ、胆のうの腫れを
引き起こします。このような時に家庭療法としての頭部と肝臓冷却法が著効
を示しますので日課として毎日実践していくようにして下さい。初診時に配布
している『局所冷却の効用』の小冊子に冷却のやり方や効用の詳細が明記され
ていますのでお読み下さい。


【僧帽筋と胸鎖乳突筋と神経の話】

僧帽筋と胸鎖乳突筋は、頸神経叢(けいしんけいそう)と脳神経のひとつである
副神経の2種類の神経の支配で動かされています。体の中でとても大事な筋肉
なので二重支配になっているのです。

 頸神経叢⇒脊髄神経から分岐して頭・首へつながる神経叢に
             なります。

       脳神経⇒脊椎動物の神経系の中で、脳に出入りする抹消神経の
事を言います。末梢神経は中枢神経以外(脳と脊髄以外
の神経)の体の各部に存在する神経繊維になります。

    

副神経は延髄(えんずい)から出ます。延髄は脊髄(せきずい)へとつながって
います。脊髄の首の部分を頚髄(けいずい)と言います。頚髄は頸椎(けいつい)
の中を通っています。この神経の走行ルートの始まりの核は、頚髄の1~6番
から細胞柱を作ります。核から集まった脊髄根は、大後頭孔を通り、頭蓋の中
に入ります。

頭蓋の中の副神経は頭蓋に開いた頚静脈孔を通って頭蓋腔に出ます。
ここから出た神経が、僧帽筋と胸鎖乳突筋を支配します。

 脊髄神経が通っている頸椎(首の部分)に、ねじれ、ゆがみの位置異常が起こ
ると、副神経にも異常が起こり、僧帽筋や胸鎖乳突筋の動きが悪くなっていき
ます。これが頭痛やめまい、首、肩、腕の痛み、しびれ、麻痺、息苦しさ、胸
の痛み、呼吸困難、脳障害等の様々な症状の引き金になります。

 

【日本伝承医学の治療がなぜ有効か】

日本伝承医学の治療では、身体のねじれ、ゆがみを整え、血液の循環・配分・
質を改善していきます。下部構造から調整することで頸椎のゆがみを正常にし、
固まった鎖骨の動きをとり戻していきます。また、心臓調整法、肝臓胆のう
叩打法で心臓のポンプ力を高め、肝臓の充血、炎症、胆のうの腫れ(はれ)
除去していきます。内臓機能から改善していくことで身体のねじれ、ゆがみを
正します。それにより僧帽筋、胸鎖乳突筋のコリ、こわばり、筋力低下を改善
していきます。

 

【ストレスと筋肉の話】

ストレスには有意識と無意識領域があります。無意識領域のストレスは潜在下
(せんざいか)のストレスをさします。自分ではあまり意識していなくても、
潜在下では気になっていて、ストレスになっていることが人にはあります。
自分でも知らないうちに交感神経と副交感神経のバランスが
乱れてしまうのです。
自律神経のバランスが乱れている状態です。

 

自律神経とは内臓や血管、汗腺等を支配する神経で、交感神経と副交感神経の
ふたつで構成されています。

このふたつの神経は拮抗的(きっこうてき)に作用します。ひとつが働いていると
もう一方は沈静する仕組みになっています。

ストレスを受けると交感神経が優位になります。そうすると筋肉は緊張し固ま
り、血流が悪くなります。体はそれを速やかに改善し、早く血液を送ろうとす
るため、血管をぎゅっと収縮させて頭痛、首痛、背部痛等の痛みを発生させます。

交感神経⇒活動している時・緊張している時・ストレスを
             受けている時に働く

                こちらが優位になると血圧が上昇し呼吸が浅くなる 

       副交感神経⇒休憩している時・眠っている時・リラックス
             している時に働く

             こちらが優位になると血圧が下降し呼吸が深くなる   

※つまりこのふたつの神経はシーソーのように交互に働いていきます 

 

【頭痛と筋肉緊張の話】

筋肉が緊張した時に起こる頭痛は「緊張型頭痛」と言い、重く、おさえられて
いるような、何か荷重がかかっているような、圧迫されるような痛みや違和感
が生じます。「偏頭痛」のようなズキズキ、チクチクした拍動性の痛みではあ
りません。

緊張型頭痛は首周辺の筋肉、特に僧帽筋と胸鎖乳突筋の緊張によって脳への血
流が悪くなると起こりやすくなります。なぜこれらの筋肉群が緊張するかとい
うと、ストレスにより肝臓が充血することで脳が虚血(血液不足)になり、脳へ
速やかに血液を送り込もうとする対応をとるため筋肉群を緊張させていきます。

日本伝承医学の治療では自律神経調整法、後頭骨擦過法により、交感神経の緊
張をとっていきます。また全体調整によって身体のねじれ、ゆがみを正し、血
液の循環・配分・質を整えます。日本伝承医学は心臓機能を高めていく心臓中
心の医学になります。心臓機能が正常になっていくと、血流が良くなり僧帽筋
と胸鎖乳突筋の緊張がとれていきます。そして頭痛も解消されます。家庭療法
としての局所冷却法とストレッチの指導も行なっていきます。

 

【僧帽筋をほぐすストレッチ】

①足を肩幅くらいに開きます

➁ひじをまげてグー握りをしてゆっくり後ろにひきます

③手をパーに開いて空気の壁を押すようなイメージで前へ伸ばします

④真上に耳につくように手を上へあげて腕を曲げながら真横におろしカニさん
 のようなポーズをとります

⑤後ろへ腕をグっと引いて肩甲骨を寄せていきます

⑥手を下におろします

⑦同じ動作をもう一回繰り返します。約3分のストレッチになるので毎日継続
 していきましょう。                                                                            

 

【胸鎖乳突筋をほぐすストレッチ】

●首の右側の胸鎖乳突筋をほぐします。

 

①右の手のひらを開いて(パーの状態)左の鎖骨の上に置き、軽く圧定します
 軽く押さえて鎖骨の動きを止めていきます

②あごを軽く上に向けて、首を左へ倒します。このとき首の右側が伸びる
イメージで行ないます

ゆっくり5秒位行ないます

③次にそのまま右の上(天井)の方を向きます。首の右側がさらに伸びていくの
 が感じられます

 ゆっくり5秒位静止します

④そのまま、鼻から息を吸って口から吐く深呼吸を行ないます
 右側の延びた筋肉がゆるんでいくのが感じられます

 このストレッチによって固まっていた右側の胸鎖乳突筋がほぐれていきます。

手のひらで軽く押さえて、鎖骨の動きを止めてあげることで、ストレッチが
より効果的になります。

 

●首の左側の胸鎖乳突筋をほぐします。

 

①左の手のひらを開いて(パーの状態)右の鎖骨の上に置き、軽く圧定します
軽く押さえて鎖骨の動きを止めていきます

②あごを軽く上に向けて、首を右へ倒します。このとき首の左側が伸びる
イメージで行ないます

ゆっくり5秒位行ないます

③次にそのまま左の上(天井)の方を向きます。首の左側がさらに伸びていく
 のが感じられます

 ゆっくり5秒位静止します

④そのまま、鼻から息を吸って口から吐く深呼吸を行ないます
 左側の延びた筋肉がゆるんでいくのが感じられます

このストレッチによって固まっていた左側の胸鎖乳突筋がほぐれていきます。

手のひらで軽く押さえて、鎖骨の動きを止めてあげることで、ストレッチが
より効果的なります。

 

【四つんばい運動法】

ひざを床につけない四つんばい姿勢(たかばい姿勢)をとります。手のひらと
足の裏を床につけて、膝を少し
曲げたまま、室内を50歩、歩きます。手のひら
を床につけて歩くことによって、手首から肩にかけて圧がかかります。圧は
骨伝導を介して肩鎖関節から胸骨に伝播し、脳内と心臓に微弱な電気を送り
込むことができます。

心臓機能が高まり、脳への血流が改善されるため、四つんばい運動法は脳梗塞
や脳内出血等でしびれや麻痺、感覚障害がある場合の大事なリハビリとなります。

【日本伝承医学の受診について】

日本伝承医学の治療は、骨髄機能を発現し細胞を新生させていくことができる
ので、難病や重篤な病、心臓疾患、脳障害に著効を示します。受診時に家庭療
法としての局所冷却法、症状に合わせた運動法(ストレッチ法)
の指導も行なっ
ていますので担当の臨床士に御相談下さい。