脂肪肝の本質とその対処法
 
 脂肪肝(しぼうかん)は肝細胞(肝臓の細胞)に脂肪が過剰にた
まった状態を言います。この脂肪のほとんどは中性脂肪(トリグ
リセリド)で、体にとって必要があって蓄えています。脂肪酸
(FFA)
を毒性のない中性脂肪という安全な形にして、体の機能回
復のために肝細胞の脂肪滴(しぼうてき)の中にしまっているの
です。細胞質内にある脂肪滴は貯蔵庫のような存在になります。
 中性脂肪は通常肝臓の約24%あり、成人の肝臓が約1.2
1.5㎏なので脂肪量は約3060gということです。ところが5
を越えてしまうと肝細胞が脂肪酸を処理しきれなくなり、遊離
脂肪酸やセラミド等の毒性脂質が増えてしまい、肝細胞を傷つ
け始めます。肝臓機能が低下すると肝臓の処理能力が追い付か
なくなり、毒性脂質を中性脂肪に変えられなくなるのです。
 食生活に気をつけ、適度な運動(歩行)によって毒性脂質はあ
る程度食い止めることはできますが、低下した肝臓機能を上げ
ていかなければ肝臓にかかる負担を減らすことはできません。
肝臓機能を上げるためには家庭療法として、アイスバッグによ
る肝臓の局所冷却を日課として行ない炎症を除去する必要があ
ります。また精神的ストレスは肝臓を傷めつけるので、少しで
も軽減できるように気もちを切り替えていきます。肝臓はスト
レスに最も弱い臓器だからです。

≪毒性脂質を高める食べ物≫
小麦粉系(パン、パスタ、うどん、ラーメン等)、揚げ物(トン
カツ、ポテトフライ、天ぷら等)、油っぽいもの、牛肉、加工
食品(ハム、ソーセージ、サラミ、コンビーフ等)、酒類(ビー
ル、日本酒、ワイン等)、マーガリン、サラダ油、ファースト
フード、スナック菓子等


※外食や既製品の揚げ物は、油を再利用しているため既に酸化
しています。
一回取り入れただけでも毒性脂質は急激に血中に
入ります。酸化脂質が血中に流れ肝臓に運ばれ、肝細胞にダメ
ージを与えます。どんな病気でも治すためには食生活には細心
の注意が必要です。食べた物で体は作られるからです。

【肝臓に脂肪を蓄える理由】
※肝臓はレバーとよばれ中身が詰まっていて血液の固まりのよ
うな大きい臓器になります。体内の血液の約41は常に肝臓に
蓄えられています。また血糖調節に必要なグリコーゲンや体に
必要な栄養素であるビタミンやミネラル等も蓄えています。
肝臓はこのように脂肪だけではなく、体のエネルギーや代謝を
支える重要な貯蔵庫としての役割があるのです。


●肝細胞にはもともと脂肪がある
 通常肝臓の肝細胞には肝臓の重量の約24%の中性脂肪が含
まれています。エネルギー源や代謝の原料(胆汁成分の合成や
ホルモン合成等)として必要だからです。肝臓は体内の細胞に
脂質を運ぶために、蓄えられている中性脂肪をVLDL(超低い比重
リポタンク)に詰めて血中へ送り出します。肝臓機能が低下し
てこの脂質輸送が正常になされないとコレステロールが合成さ
れず、細胞膜が作れなくなり細胞が壊れてしまいます。免疫細
胞や腸細胞が破壊され、生命維持が困難になります。

●脂肪は主要な代謝エネルギー源
 肝臓の代表的な働きは体内エネルギーの合成です。食べ物か
ら得たタンパク質、炭水化物(糖分)、脂肪を分解して体の活動
に必要なエネルギー(代謝エネルギー)に変換します。代謝エネ
ルギーによって合成されたATP(アデノシン三リン酸)が、私た
ちの生命活動を支える重要なエネルギーとなります。
 この代謝エネルギーで中心的役割を担っているのが脂質にな
ります。肝臓機能が低下すると、エネルギー代謝率の高い(糖・
タンパク代謝の約2)脂質を肝臓に集め代謝エネルギーを活発
にさせてエネルギー不足を補います。

●肝臓に発生した活性酸素から守る
 精神的ストレスの持続は交感神経を緊張させ免疫細胞の白血
球内の顆粒球(好酸球、好中球等)とリンパ球のバランスを崩し、
顆粒球を大量に増加させてしまいます。このとき一時的に活性
酸素が発生し酸化ストレスが生じ、組織を酸化させます(体が
さびる状態)
 この活性酸素から守る対応を脂肪が担っています。細胞の中
に浮かぶ小さな油玉のような脂肪滴(しぼうてき)が緩衝材のよ
うな働きをして、活性酸素から体を守ってくれるのです(脂肪滴
=脂肪の貯蔵庫)
 肝臓は体内に発生した毒素を分解、解毒する働きを担ってい
ますが、解毒段階でも活性酸素は多く発生します。肝臓機能が
低下するほど酸化ストレスが上昇するので、脂肪の蓄積が増え
ていきます。
 この増えすぎた脂肪を薬剤等で一時的に減らし封じ込めたと
しても、肝臓本来の代謝・解毒・脂質輸送等の機能を回復させ
ない限り根本解決にはなりません。逆に薬を服用し続けること
によって肝細胞に負担をかけ肝臓障害を引き起こすこともあり
ます。薬剤の長期服用は肝臓、腎臓、血液組織等への負荷を伴
うという認識をもつことです。
※人体の皮下は脂肪の蓄積場所となっています。この皮下脂肪
には寒さから身を守るための働きと、体温が上がりすぎないよ
うにするための働きがあります。脂肪には熱によって溶解し低
温になると固まるという性質があります。固まった脂肪は触る
と冷たくなり、熱の上昇を抑える冷却的効果もあるのです。
但し肝臓の脂肪は脂肪滴という中に存在しているため皮下脂肪
のような作用とは異なります。肝細胞の脂肪には、脂肪滴に貯
蔵することで毒性脂質を回避する防御的作用というものがあり
ます。

【脂肪肝の対処法】
 現代では日本人の3人に1人がこの脂肪肝(しぼうかん)と言わ
れています。
肝臓に脂肪が過剰に蓄積されると肝細胞がストレ
ス反応を引き起こし炎症が起こります。炎症が慢性的に続くと、
肝臓は傷ついた部分を治そうとして固い組織(コラーゲン等の
固いたんぱく質)を作ります。これが線維化と呼ばれる現象に
なります。
 肝臓は本来とてもやわらかく、弾力がある臓器になります。
それが線維化されることで固くなり肝硬変等に移行するリスク
を負います。臓器は固くなると血流が阻害され異常細胞が増え
るため、がんが育ちやすい環境をも生み出すことになります。
肝臓の局所冷却法は肝臓の炎症を除去して固くなって線維化し
た肝臓をやわらかく戻すことができる最善の家庭療法になりま
す。

 アルコールの過剰摂取もなく、食べ過ぎや運動不足、肥満で
もないのに脂肪肝になる人が増えています。それは脂肪肝の原
因の背景に、精神的ストレスによる肝臓機能低下と交感神経緊
張、脳の炎症が存在しているからです。
 精神的ストレスは脳を酷使し、脳内に熱(炎症)を発生させま
す。脳の炎症は脳幹部の基本的生命維持機構に支障をきたし、
心拍、呼吸、体温、エネルギー代謝、ホルモン、自律神経、意
識、情緒安定等の全てに悪影響を及ぼします。また脳の炎症は
脳内の神経伝達物質、脳内ホルモンを過剰消費させ体内ホルモ
ンを分解する肝臓にも負担をかけます。

 改善するためには生活習慣の見直しが必要です。脳の炎症を
除去するために就寝時に氷枕での後頭部の冷却、アイスバッグ
での両首や首の後ろ、額の冷却を行ないます。肝臓の炎症()
を除去するための肝臓冷却は、アイスバッグをあてて気もちが
いいと感じる程度に行なうようにします。
 日本伝承医学の治療では、脂肪肝の要因となる脳の炎症、肝臓
機能低下、交感神経緊張を改善するための個別操法を用いて脂
肪肝の臨床にあたります。
 肝臓は再生能力が非常に高い臓器で、約60日で全細胞が入れ
替りますが、炎症があると肝細胞の分裂や代謝が抑制され再生
が遅れてしまいます。家庭療法としての肝臓冷却が重要な意味
をもちますので必ず行なうようにしてください。