日本伝承医学の卵巣嚢腫の治療

 卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)は、卵巣に生じる腫瘍(しゅよう)になります。
液体の入った袋のような病変が形成され、袋の中を満たす成分によって、
漿液性(しょうえきせい)嚢腫、粘液性嚢腫、皮様性(ひようせい)嚢腫、
内膜性嚢腫(チョコレート嚢胞)に分けられます。多くは良性腫瘍で自覚
症状があまりないのですが、大きくなると以下のような様々な症状が出ま
す。


≪卵巣嚢腫が大きくなると・・・≫
○おなかが大きくなるので腰がおもくだるく感じます。
○腰痛、下腹部痛や膨満感が生じることがあります。
○大きくなった嚢腫が膀胱や腸を圧迫するので頻尿や尿漏れ、残尿感、
 便秘や便が出にくくなる場合があります。

○嚢腫の重みで卵巣と子宮をつないでいる茎のような部分がねじられ
 て卵巣への血流が遮断されてしまう茎捻転(けいねんてん)を引き起こ
 すことが稀にあります。茎捻転は耐え難い激痛、嘔吐、吐き気等が起
 こります。

○腹部が重くなるので、体にねじれのゆがみが生じます。上体(脊柱)
 ねじれのゆがみが生じると、横隔膜という筋肉の上下の動きが妨げら
 れ、息苦しさや呼吸がしづらくなります。

 脊柱の中を通る脳脊髄液の還流は、横隔膜の上下運動が担ってい
るので、横隔膜が固くなり動かなくなると下記のような症状が起こります。

              ↓   ↓   ↓
 体にねじれのゆがみが生じて横隔膜が動かなくなると、脳脊髄液の
還流が妨げられるため、頭痛やめまい、肩こり、首の痛み、背中の張り、
肩痛、背部痛、腰痛、手足のしびれ等の様々な症状が起こります。
 脳脊髄液は自律神経やホルモンの司令塔となる脳の環境を守って
いる生命の循環液になります。
※日本伝承医学では体のねじれのゆがみをとり、脳脊髄液の還流を促
 していきます。 
(三指半(さんしはん)操法/腰椎捻転法/横隔膜操法/自律神経調整法)


≪嚢腫はストレスを受けると大きくなる≫
 人間はストレス(心労や疲れ、心配事等)を受け続けると脳(視床下部)
に炎症が起こり、ホルモンバランスを乱します。特にチョコレート嚢胞は
女性ホルモン(エストロゲン)の影響を過度に受けると大きくなる性質が
あります。ストレスによりエストロゲンが過剰な状態になると嚢腫の組織が
刺激されて急速に大きくなってしまうのです。

 ストレスによる脳の炎症は連鎖するため、全身の免疫系に影響を及ぼ
します。慢性的なストレスは脳内のミクログリアという細胞を活性化させ、
脳内に炎症を引き起こすことが医学的にも解明されています。脳内の
炎症は自律神経を乱し、ホルモンの分泌バランスを崩します。
 嚢腫を大きくしないためには脳の炎症を除去することが命題です。
日本伝承医学では局所冷却法として、就寝時の氷枕での後頭部冷却
とアイスバッグでの肝臓、首筋、ひたい等の冷却を必修とします。治療
では脳内の炎症を除去するために、肝臓胆のうの叩打法、自律神経調
整法、後頭骨擦過法等の操法を用います。


【チョコレート嚢胞】
 チョコレート嚢胞(のうほう)は、卵巣に生じる子宮内膜症のことをさしま
す。子宮内膜症とは、子宮の内部だけに存在する子宮内膜が、子宮以
外の所に増殖する病状になります。チョコレート嚢胞は卵巣内で子宮内
膜細胞が増殖してしまいます。通常子宮内膜は生理時にはがれ落ち
出血と共に排出されますが、卵巣は排出先がないため、内部にたまっ
ていき血液が茶色に変色しチョコレートのようになります。

 チョコレート嚢胞が発症すると、卵巣の内部に古い血液がたまってい
くため卵巣が大きくなっていきます。卵巣内で増殖した子宮内膜細胞か
サイトカイン等の物質が分泌されるため、生理時に強い下腹部痛や
腰痛等が起きやすくなります。生理以外でも下腹部痛、腰痛、排便痛、
性交痛等が起きることがあります。
 チョコレート嚢胞を発症すると   CA-125の腫瘍マーカーが上昇する
ことがあるため、血液検査時の診断の指標のひとつとされています。
※サイトカイン・・・主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質になります。
サイトカインは健康維持に必要な免疫を機能させるための役割を担っ
ていますが、分泌のバランスが崩れると、自身の細胞を攻撃し始め(
イトカインストーム)、疾患を引き起こす場合もあります。サイトカインストー
ムは自己免疫疾患や感染症を重症化させる要因ともなります。

【子宮内膜症】
 子宮は女性の骨盤内にある臓器で、上部の袋状の子宮体部(しきゅう
たいぶ)と、子宮の入り口にあたる子宮頸部(しきゅうけいぶ)に分けられ
ます。
子宮内膜症は、本来子宮内にしか存在しないはずの子宮内膜
や子宮内膜様の組織が、子宮以外の場所(卵巣、ダグラス窩、S字結
腸、膣、外陰部、膀胱、へそ等)にできる病気になります。この子宮以外
の場所にできた子宮内膜にも本来の子宮の月経周期と同じような変化
が起こるため、月経期になると子宮以外の場所にできた子宮内膜も剥
離し出血します。症状は多岐に渡りますが、転移した場所からの剥離と
出血のため、その部位に強い痛みが生じます。下腹部痛、腰痛、排泄
時の痛み、排卵痛、性交時痛、膀胱炎性の痛み等を伴う場合もあります。
頭痛、情緒不安、睡眠障害等を発症することもあります。

【婦人科疾患と心労、精神的ストレスとの関連性】
 女性ホルモンは脳から分泌されるホルモンによって調整されています。
脳の視床下部から性腺刺激ホルモンが放出され、脳下垂体を刺激し、
下垂体から性腺刺激ホルモンである卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホル
モンが分泌されます。
 このふたつのホルモンの働きで卵巣から女性ホルモンが分泌されます。
ところが心労やストレス等で脳に炎症が起きると脳下垂体が熱を帯び、
性腺刺激ホルモンが正常に分泌されなくなります。子宮や卵巣に現わ
れる病状は脳の炎症によるホルモンバランスの乱れが背景に存在して
いるのです。長期に渡る水の摂取不足も発症させる要因となりますので、
日課としてこまめに水を飲む習慣をつけていきます。
 人間の脳は最も熱に弱いため、口耳鼻等のいくつもの穴があいていて
熱がこもらないようになっています。日本伝承医学が推奨する家庭療法
としての頭部冷却法は、就寝時に氷枕(氷を入れた水枕)で後頭部を冷
却することで、脳内の炎症()を除去し、ホルモンのバランスを整え
子宮や卵巣を良い状態にしていきます。またストレスによる肝臓の充血
を緩和し、精神状態を安定させ、良い脳内物質を生成するためには
肝臓の局所冷却も大事です。 
 婦人科疾患は2週間に一度の手技療法による治療で、まず血液の循
環・配分・質を整え、免疫力(造血力)と生命力(細胞新生力)を高めて
子宮と卵巣の状態を改善します。骨にゆり・ふり・たたきの圧や振動を加
えることで骨髄機能を発現させます。骨の特性である「圧電作用」と「骨
伝導」を用いた治療法により、免疫力と生命力を高め、痛みや苦痛を緩
和していきます。受診時には家庭療法の指導も行ないます。

     参考文献:有本政治著  『日本伝承学婦人科編