日本伝承医学の卵巣嚢腫の治療

 卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)は、卵巣に生じる腫瘍(しゅよう)になります。
液体の入った袋のような病変が形成され、袋の中を満たす成分によっ
て、漿液性嚢腫、粘液性嚢腫、チョコレート嚢腫等に分けられます。多
くは良性腫瘍なので急激に大きくなったり転移するようなことはほとんど
ありませんが、大きくなると卵巣の根元がねじれて血流が遮断される茎
捻転(けいねんてん)を引き起こすことがあります。


【チョコレート嚢胞】
 チョコレート嚢胞(のうほう)は、卵巣に生じる子宮内膜症のことをさし
ます。子宮内膜症とは、子宮の内部だけに存在する子宮内膜が、子宮
以外の所に増殖する病状になります。チョコレート嚢胞は卵巣内で子宮
内膜細胞が増殖してしまいます。通常子宮内膜は生理時にはがれ落
ち出血と共に排出されますが、卵巣は排出先がないため、内部にたま
っていき血液が茶色に変色しチョコレートのようになります。

 チョコレート嚢胞が発症すると、卵巣の内部に古い血液がたまってい
くため卵巣が大きくなっていきます。卵巣内で増殖した子宮内膜細胞
からサイトカイン等の物質が分泌されるため、生理時に強い下腹部痛
や腰痛等が起きやすくなります。生理以外でも下腹部痛、腰痛、排便
痛、性交痛等が起きることがあります。
 チョコレート嚢胞を発症すると CA-125の腫瘍マーカーが上昇するこ
とがあるため、血液検査時の診断の指標のひとつとされています。
※サイトカイン・・・主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質になりま
す。サイトカインは健康維持に必要な免疫を機能させるための役割を
担っていますが、分泌のバランスが崩れると、自身の細胞を攻撃し始
(サイトカインストーム)、疾患を引き起こす場合もあります。サイトカイ
ンストームは自己免疫疾患や感染症を重症化させる要因ともなります。

【子宮内膜症】
 子宮は女性の骨盤内にある臓器で、上部の袋状の子宮体部(しきゅ
うたいぶ)と、子宮の入り口にあたる子宮頸部(しきゅうけいぶ)に分けら
れます。
子宮内膜症は、本来子宮内にしか存在しないはずの子宮内
膜や子宮内膜様の組織が、子宮以外の場所(卵巣、ダグラス窩、S
結腸、膣、外陰部、膀胱、へそ等)にできる病気になります。この子宮
以外の場所にできた子宮内膜にも本来の子宮の月経周期と同じような
変化が起こるため、月経期になると子宮以外の場所にできた子宮内
膜も剥離し出血します。症状は多岐に渡りますが、転移した場所からの
剥離と出血のため、その部位に強い痛みが生じます。下腹部痛、腰痛、
排泄時の痛み、排卵痛、性交時痛、膀胱炎性の痛み等を伴う場合も
あります。頭痛、情緒不安、睡眠障害等を発症することもあります。

【婦人科疾患と心労、精神的ストレスとの関連性】
 女性ホルモンは脳から分泌されるホルモンによって調整されていま
す。脳の視床下部から性腺刺激ホルモンが放出され、脳下垂体を刺激
し、下垂体から性腺刺激ホルモンである卵胞刺激ホルモンと黄体形成
ホルモンが分泌されます。
 このふたつのホルモンの働きで卵巣から女性ホルモンが分泌されま
す。ところが心労やストレス等で脳に炎症が起きると脳下垂体が熱を
帯び、性腺刺激ホルモンが正常に分泌されなくなります。子宮や卵巣
に現われる病状は脳の炎症によるホルモンバランスの乱れが背景に
存在しているのです。長期に渡る水の摂取不足も発症させる要因とな
りますので、日課としてこまめに水を飲む習慣をつけていきます。
 人間の脳は最も熱に弱いため、口耳鼻等のいくつもの穴があいてい
て熱がこもらないようになっています。日本伝承医学が推奨する家庭
療法としての頭部冷却法は、就寝時に氷枕(氷を入れた水枕)で後頭
部を冷却することで、脳内の炎症()を除去し、ホルモンのバランスを
整え子宮や卵巣を良い状態にしていきます。またストレスによる肝臓の
充血を緩和し、精神状態を安定させ、良い脳内物質を生成するため
には肝臓の局所冷却法も大事です。 
 婦人科疾患は2週間に一度の手技療法による治療で、まず血液の
循環・配分・質を整え、免疫力(造血力)と生命力(細胞新生力)を高め
て子宮と卵巣の状態を改善します。骨にゆりふりたたきの圧や振動を
加えることで骨髄機能を発現させます。骨の特性である「圧電作用」と
「骨伝導」を用いた治療法により、免疫力と生命力を高め、痛みや苦痛
を緩和していきます。受診時には家庭療法の指導も行ないます。
       参考文献:有本政治著  『日本伝承学婦人科編