第5回未来塾~
≪肩甲上腕リズム≫
上肢の180度の側方挙上においては、肩甲上腕関節での上腕骨の120度
の挙上と肩肋関節での肩甲骨の60度の上方回旋が同時に組み合わされて
起こります。
上腕のスムーズな挙上運動の180度の際、120度:60度=2:1の比率
で連動して動く肩甲骨と上腕骨の動きを肩甲上腕リズムといいます。
≪肩周辺機構の機能解剖まとめ≫上肢の側方挙上0度~180度において
(1)0度~60度
フィックス現象
肋骨と椎骨の動きをなくしてロックすることで、右は胆のう、
左は心臓の吹き出しを守る対応をとっています。0度~60度迄
ということはほとんど手が上がらない状態で重症と言えます。
左の場合は心臓機能に弱りがあります。右側が上がらない場合
はストレス、心労による肝臓の肥大から胆汁(たんじゅう)が
正常に分泌されていません。どちらの場合も身体が弱っている
ので横たわる時間を多くとり静養が必要です。
(2)0度~90度(60度~90度を含む)
肩甲上腕リズムが働いていない状態
肩甲骨の外転と上腕骨の外旋挙上の連動リズムが狂っています。
この二つの比率は2対1になります。⇒肩甲骨1、上腕骨2
(参) 肩甲骨と上腕骨が癒着して肩甲上腕リズムを消失する場
合有り
(3)90度~120度
上腕骨の外旋と内部への引き込みがうまくいかない状態
(4)120度~150度
鎖骨の挙上が必要
(5)150度~180度
鎖骨の挙上と前方回旋が必要
鎖骨の形状がクランクとなり肩甲骨の上下動を作ります
⇒クランク・カム作用
手を上げた時、腕が耳までつくためには鎖骨の前方回旋が必要
になります。180度まで上がらない、腕が耳にぴったりつかない
ということは肩が下がって巻き込んでいるため、鎖骨に位置異常
が起き、鎖骨の前方回旋ができていないということになります。
※肩関節は単体で動いているのではなく、「周辺機構」という言葉の通
りで、肩周辺の7つの関節が全て関与しています。7つの関節の連動と
調和が必要になります。
ペアストレッチ上肢の部
2021年2月24日第5回スポーツトレーナー未来塾の講義内容になります。
テキスト『ペアストレッチ』~ 著:有本政治
≪関節運動の原理≫~関節の秘密
すべての関節の動きには一定の原則があります。
(1)自動運動領域・・・自分で動かせる関節の最大運動域
(2)他動運動領域・・・他者が動きに補助を加えて動く運動域
(3)矯正運動領域・・・他動運動領域からさらに関節に微振動を与えて
獲得できる運動域
※以上の原則をしっかり認識した上で失った関節の可動域を回復させる
ことが大切になります。
【ペアストレッチ上肢の部】
(1番) 肩甲骨はがし・・・肩甲骨周辺の筋肉のこりをゆるませ肩甲上腕
リズムを改善させます。肩甲骨が固い人は手が入らないので後ろ
ではなく横にして行ないます。片手の手指先で肩甲骨をはがすよ
うにつかみ、他方の手で肩鎖関節をつかみ胸鎖関節をめがけて
左右各10回ずつ楕円運動をします。逆まわしもします。肩鎖関節
と胸鎖関節に面圧がかかるように10秒くらい圧定します。肩甲骨
をはがすように上に引き伸ばします。両肩同じように行ないます。
このようにして肩甲骨の動きと鎖骨に動きをつけています。術者
は腰を落とし膝の屈伸によって行ないます(テキスト1番の図参照)。
※肩甲骨がはがれないでぴったりくっついている人は交感神経の
緊張があるので、肩甲骨はがしに入る前に受者にうつ伏せになっ
てもらい「後頭骨擦過法」から入ります(実技解説書「後頭骨擦過
法」参照)。
(2番) 受者は長座します。上肢を挙上させ、術者は両手で受者の手関節
部をつかみ脇をしめあごの下に保持し上方に挙上します。この際
受者の手で引き伸ばすのではなく必ず膝の伸展で上下させます(テ
キスト2番の図参照)。
効果:肩とその周辺の筋を伸ばし、テニス、野球等のひじ痛の予
防になります。
(3番) 術者は自分の片膝部で受者の体を支えて、胸を張らせてあげます。
受者の肘を屈曲させひじを反対肩の方へ押し伸ばします。術者は
受者の背に下肢を密着させて行なうとやりやすいです。左右10秒
くらい行ないます。
効果:肩関節の可動域を拡大し、肩痛、肩こり、ひじ痛予防にな
ります(テキスト3番の図参照)。
(4番) 烏口(うこう)腕筋を引き伸ばすように、烏口突起(肩付近)に一方
の手の四指をあてもう一方の手で受者の手首をつかみ後ろにひい
てあげます。
効果:肩関節の可動域を広げます。首筋を強化し、頭痛、肩こり、
不眠症の予防になります。
(5番) 受者の片手手指を肩甲下筋・大円筋・小円筋の付着部にあて、片
手で受者の手首をつかみ、首に巻き付けるような方向に引き伸ば
します。受者に自分の肘部を支えてもらいます(テキスト5番図参照)。
効果:肩関節の可動域を広げます。
(追加手技)
受者の胸鎖関節部に術者の手根部をあて、もう一方の手で受者の
肩と肘部を術者の上腕部でかかえるように支え、胸鎖関節を支点
にした楕円(だえん)運動を面圧をかけながら10回位行ないます。
効果:胸鎖関節に動きを出します。