※日本伝承医学では学校や病院では教えてもらえなかった体の
原理・摂理を説いています。自分の体に今起きていることの根
本要因がわかれば解決策が見出せます。腰の症状は精神状態と
も関連があるという観点から記していきます。
腰がだるい・おもい・かたい・
痛い・張る・つらい
人間の体はストレスを受けると脳が身の危険を察知して自律
神経の交感神経が活発になります(交感神経の緊張)。交感神経
の緊張は「逃走・闘争反応」(flight or fight response)と言
われます。これは1930年代に生理学者のウォルター・キャノン
が提唱した概念で、生物が危険に直面した時の生理的な防御メ
カニズムに由来します。
人間は危険や脅威、強いストレスや不安感、悩み、心配事、
不快感等が生じると、脳の扁桃体がこの状況を「危険!」と判
断し、視床下部を通じて交感神経を活発化して、瞬時に逃げる
(flight)か戦う(fight)かのモードに切り替わります。
筋肉は逃走・攻撃・防御に備える準備状態に入るため筋線維
が収縮して固くなります。筋肉はもともと伸びたり縮んだりし
て関節を動かすゴムのようになっています。それが固まり柔軟
性を失うと神経が圧迫されて痛みが起こります。
神経は筋肉の間や筋肉の真上や真下を通っていて、柔らかいケ
ーブルのような構造(神経線維)でできているので圧迫や引き延
ばしには非常に弱い構造になります。
神経は通常、筋肉のすきまをスムーズに滑るように動いてい
るのですが、交感神経が緊張すると筋肉が固まるため神経の通
り道が極端に狭くなってしまい、神経が圧迫されて痛みが発症
します。痛みが起こると免疫細胞が活性化して炎症物質(サイ
トカイン)を放出します。炎症物質は傷ついた細胞を修復する
役割があるので炎症は封じ込めないで出しきるまで出させてあ
げる必要があります。つまり痛みや炎症は悪いことではなく、
治すために必要な過程ということです。
必要な過程ではありますが長期化すると脳は痛みを記憶させて
いきます。
日本伝承医学では、腰だけを診るのではなく体全体との関連
の中で診ていきます。肝臓胆のうに炎症が起きたり、心臓のポ
ンプ作用が低下していると、体幹部にねじれのゆがみが生じて
腰痛の引き金となります。施術ではまず三指半(さんしはん)
操法で体のねじれのゆがみをとります。そして交感神経の緊張
を緩めるために自律神経調整法を用います。腰痛の個別操法も
用います。
腰に症状が出たら我慢して次の受診日を待たずに連絡して途中
で来るようにして下さい。
【大腰筋は腰痛の隠れた原因筋】
大腰筋は腰椎から出て、骨盤の内側を通り大腿骨の小転子(も
もの付け根)に付着しています。上半身と下半身をつなぐ唯一の
深層筋(インナーマッスル)になります。姿勢を保つための体幹
の柱のような存在です。
この大腰筋が交感神経の緊張(心の緊張)により固くなったり
縮んだりすると、腰の安定性が失われ姿勢が崩れ、腰椎や骨盤
の動きが制限されるので腰痛が起きやすくなります。「心が緊
張すると腰が重くなる」と言われますが、これは単なる迷信で
はなく生理学的にも立証されているのです。
【痛みは記憶される】
痛みの刺激を受けると、電気信号が脊髄を通って脳に伝わり
ます。そして脳の視床や大脳で痛いと認識します。神経回路は
体験によって構造と機能を変えていきます(神経可塑性)。痛み
が繰り返されると、この体験を回路が学習し慢性痛として残っ
てしまうのです。つまり本当はたいして痛くないのに、すごく
痛い、苦しいという情報が記憶として残ってしまうのです。
痛みの記憶を解除するためには、脳内の炎症を除去し脳の働
きを正常にする必要があります。そのためには就寝時の氷枕に
よる後頭部冷却が有効です。
筋肉に柔軟性をとり戻すために、無理のない程度のストレッチ
を毎日行なうことも必要です。
日本伝承医学では自律神経調整法、麻酔操法、後頭骨擦過法
等により、記憶された痛みの感覚を和らげていきます。
【大腰筋を柔らかくするストレッチ】
ストレッチにより大腰筋が柔らかくなると腰椎を前へ引っ張
る力が弱まり腰椎にかかる圧力が軽減されます。骨盤が自然な
位置に戻るので腰や臀部の筋肉の緊張もとれます。固まってい
た大腰筋がストレッチでほぐれてくると、股関節の可動域も広
がるので立つときや歩行時に腰にかかる負担が減り動作が楽に
なります。
ストレッチはひとつの動作で20秒はキープすることが大事で
す。20秒以上伸ばすことで筋紡錘(筋肉の中にあるセンサーの
ようなもの)の反射が落ち着き筋肉がリラックスして伸びやす
くなります。短い数秒程度のストレッチは逆に筋肉がびっくり
して縮んでしまうので逆効果になります。ストレッチは1ポーズ
を20秒くらい保ちゆっくり優しく伸ばすようにします。
家庭でできる大腰筋のストレッチをひとつ挙げてみます。
仰向けに寝て片方の膝を曲げて胸に引き寄せます。もう片方の
足は床につけたまままっすぐに伸ばします。この状態で20秒維
持します。今度は反対の膝を曲げて胸に引き寄せます。ストレ
ッチは毎日継続して行なうことで効果がでます。
※大腰筋は深層筋なので自己調整が難しい部位になります。
日本伝承医学の治療では「ふり操法」を用いて骨の圧電作用に
より微弱な電気を発生させ、筋肉に電気信号を送ることで大腰
筋の引きつりや拘縮を除去します。