憩室炎

 憩室炎(けいしつえん)は、大腸等の消化管の壁にできた小さ
な袋上のくぼみ(憩室)に炎症や感染が起こる病状になります。
発熱、下腹部に激しい痛み、下痢、便秘、嘔吐等の症状が出ま
すが、重症化して憩室に穴があくと腹膜炎を引き起こして緊急
手術になることがあります。
 若い頃は弾力がありじょうぶだった大腸の壁は、高齢になる
と筋肉や結合組織が衰えて、はりがなくなってきます。弾力性
が低下するため、腸管の内圧に耐え切れず憩室ができやすくな
ります。

 憩室は袋状で出口が狭いため、一度便のカスや粘液が入り込む
と排出されにくくなります。そこに腸内細菌が入り込み閉じ込
められ、中で細菌が繁殖して化膿して激しい炎症が起きます。
この状態を憩室炎と言います。

 憩室炎は加齢や食生活(食物繊維不足)、腸内圧上昇(便等)
起因するとされていますが、根本要因には脳の炎症があります。
脳に炎症があると自律神経のバランスが乱れ、全ての生理機能
が崩れます。背景には免疫力の低下があるので腸だけの局所で
捉えるのではなく心身全体との関連の中でみていくようにします。

【脳腸相関】
 脳と腸は自律神経系、ホルモン、免疫系等を通して互いに影響
し合って働いています。この仕組みを脳腸相関と言います。
 心労や精神的ストレス、プレッシャー等が続くと、脳がこれ
を危険な緊急事態と判断して、脳の免疫細胞(ミクログリア)
活性化させます。活性化したミクログリアは、サイトカインと
いう炎症性の化学物質を過剰に分泌させ、脳に慢性的な炎症状
態を引き起こします。
 脳の炎症は自律神経のバランスを乱し、常に交感神経を緊張
状態にしてコルチゾール等のストレスホルモンを放出し続けま
す。ストレスホルモンが出続けると腸のバリア機能が著しく低
下していきます。精神状態と腸の機能は密接に関わっているか
らです。


【脳に炎症が起きると腸はどうなるか】
 ストレスホルモンの放出で腸のバリア機能が低下すると、腸
の粘膜細胞同士をぴったりくっつけている結合がゆるみ、腸壁
にすき間ができて腸内細菌や毒素が体内に漏れやすくなります
(
腸管バリアの破綻)

 また腸のぜんどう運動が乱れ、腸管の一部が異常に収縮し、
腸内の圧力が局所的に高まります。腸壁の弱い部分は押し出さ
れ、粘膜が外側へポコッと押し出され、そこに憩室ができやす
くなります。このようにストレスによる脳の炎症が憩室炎を発
症させているのです。

 おなかの病気とされている憩室炎は実は、脳が感じている慢
性的ストレスや緊張にあったのです。病状は心より体の方に正
直に反応が現れます。心では大丈夫、たいしたことはないと思
っていても、体にSOSが現れてくるのです。
 局所の炎症である憩室炎は心身からの警告サインになります。
毒素が血液にまわって全身へ広がると敗血症(全身の多臓器不全)
を引き起こしかねません。一旦症状が回復しても決して過信し
ないようにします。


 ≪腸のぜんどう運動とは≫
 腸のぜんどう運動(蠕動運動)とは、食べた物や便やガスを体
の外へスムーズに送り出すために、腸がミミズがはうような波
状収縮を繰り返す運動のことを言います。腸壁にある筋肉(平滑
)が、上流側できゅっとしまり、下流側でゆるむという連鎖を
繰り返すことで、中にあるものを絞り出すように送り出してい
きます。このぜんどう運動はストレス等で自律神経のバランス
が乱れると、運動が阻害され腸内圧が上昇し、激しくけいれん
したり、耐えがたい激痛が生じます。

【日本伝承医学の治療】
 憩室炎は腸だけでの症状ではなく脳の状態(精神状態)と深く
関りがあります。
 日本伝承医学では根本要因となる脳の炎症を除去するために、
自律神経調整法、後頭骨擦過法、眼圧調整法、痛みの記憶を解
除する法(麻酔操法)等を用います。個別操法として腸の操法を
用いて低下した腸の機能を高めて、腸を良い環境にしていきます。

 家庭療法としての氷枕での後頭部の冷却、アイスバッグでの
首筋やひたいの冷却は日課として毎日実践します。
 脳は熱に最も弱い臓器です。そのため熱がこもらないように
目や鼻、耳、口等の穴があいているのです。脳はタンパク質中
心の組織なので熱変性が起きやすい部位になります。一日の終
わりに疲弊して熱を帯びた脳を冷却して休ませてあげます。
 脳を構成する神経細胞や酵素、受容体等の本体はすべて、デリ
ケートなタンパク質でできています。タンパク質は高熱で熱変
性を起こします。熱で固まった卵が元に戻らないように、一度
熱変性を起こすとその部位の機能は元にはもどりません。

 脳に熱変性を生じさせないためにも局所冷却としての頭部冷却
は重要な意味を持ちます。


【神経可塑性について】
 熱変性でダメージを受けた脳の神経細胞やネットワークは元
には戻りません。しかし脳はその環境に対応できるように、新
しい神経回路を作るシステムをもっています。これを神経可塑
(しんけいかそせい)と言います。
 脳のある一部分がだめになっても新たなシナプス(神経細胞の
)が作られ、別の回路で損傷したネットワークを修復していく
のです。日本伝承医学はこの神経可塑性を促すことができる
唯一の治療技術となります。


【腸閉塞と腸捻転】
 腸閉塞は腸管の内部が何らかの原因でふさがり食べた物や消化
液、ガス等が先へ進まなくなる病状を言います。イレウスとも
呼ばれます。消化管の通過障害が起こるので激しい腹痛や嘔吐、
ガスや便が停滞してお腹の張り(腹部膨満)等が起きます。腸へ
の血流が途絶えて組織が壊死してしまう、こうかく性イレウス
を引き起こすと緊急手術になる場合があります。

 腸捻転は腸がねじれることで食物やガスの通過が妨げられる
だけではなく血管もねじれて血流が途絶えてしまうのが特徴に
なります。特に小腸や大腸の一部であるS字結腸や盲腸等に発生
しやすい傾向があります。突然激しい腹痛が起きます。嘔吐や
吐き気、お腹の張りが生じます。

 憩室炎や炎症による腫れや癒着を繰り返すと、腸閉塞や腸捻
転を発症する場合があります。


【憩室ができやすい人とは】
 根本要因に脳の炎症があるため、常に交感神経が緊張している
人に起きやすくなります。交感神経の緊張をとくには、気分転
換をして心労やストレスを軽減するようにします。いやな人と
は合わない、いやな場所には近づかないようにします。無理を
して対人関係を築こうとしないで、人との距離を置くことは
とても大事です。

 憩室炎は腸壁の筋肉や結合組織が衰え始める50歳以上に起き
やすくなります。腸を健康に保つためには、横になる時間を
できるだけ多くとり臓器を重力から解放させて休ませてあげる
ようにします。

 一日に食べる食物繊維の量が少ないと便秘や固い便になりや
すく、いきむ回数が増えると腸内圧が高くなり憩室ができやす
くなるので食生活には充分気をつけます。
 憩室炎は一度落ち着いても脳の疲弊(精神の疲れ)が続くと再
び発症します。どんなに気分転換をしても心はなかなか休まら
ないものです。普段から睡眠時間を多くとって、まずは体から
休ませることです。