〈人体の電気物理を応用した技術〉


 人体は“電気仕掛けのロボット”といわれるように電気をエネルギ
ーとして働いています。心臓も筋肉も脳も全ての組織・器官は電気が
流れることで、働くことができるのです。また約70兆個といわれる細
胞のひとつひとつも細胞膜を通して、膜の内と外の間に電位差がある
ことで、電気が流れ生きています。
 人体内には、一定の電気レベルが常に保たれていなければ生命は維
持できません。そのためには、常に体内で電気を発生・充電し、また
外界から電気を吸着し、補充・充電しなくてはなりません。私たちの
命は、体内で電気を常に発生させ、また大地から、大気中から電気を
補充して生きています。
 すべての病気や症状の背景には必ず“電気不足”の状態があります。
電気レベルが低下したり、流れが悪くなったり、滞電したりすること
で、様々な症状をあらわしてきます。まず全体的な電気レベルを高め、
電気不足の場所には、電気を流し、滞電している場所は放電してあげ
なければなりません。電気が流れるためには“電位差”が必要です。
全体においてもプラスとマイナスをはっきりさせることが必要であり、
内臓、筋肉、脳等個々においても、プラスとマイナスをはっきりさせ、
電位差を作り、電気を流してあげなければなりません。
 日本伝承医学の技術はまず、人体の一方の極である足のかかとの骨
に電気を発生させ、頭との間に電位差を作ります。
そして全体的な電気の流れを変えるために骨をたたき、圧をかけてい
きます。また手や足を開き、ある形を作ることで人体内の電界を変え、
人体電気の分布を電気の流れを変えていきます。特に手は、股が多数
分かれている場所であり、手指を開くことで電界を変え、各内臓や胸、
神経系統の電気的分布を瞬時に変えることができます。“合掌の形”
が民族を越えて世界共通なのは、ある形を作ることで、人体電気の流
れと血液の循環・配分が変わるということを人々が気づいていたとい
えるでしょう。日本の古代人はこれらを「形の医学」として、数多く
の技法を伝え残してくれていたのです。

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