静脈栄養

【静脈栄養】

静脈栄養には、腕などの抹消静脈から投与する「抹消静脈栄養(PPN)」と心臓
に近い太い血管である中心静脈(上大静脈)から投与する「中心静脈栄養(TPN)
があります。食事ができない期間が1週間~10日までの場合はPPNが行なわれ、
それ以上の長期間にわたると予想される場合はTPNが選択されます。

抹消静脈栄養は、抹消静脈にカテーテルを留置して行なわれる静脈栄養法で、
主に水分電解質の補給、10%ブドウ糖液やアミノ酸製剤、脂肪乳酸を使用します。
1日あたり1000Kcal程度のカロリーを投与することを目的としています。

中心静脈栄養(高カロリー輸液)は、IVHとも呼ばれますが、多量の栄養を
与えるという意味から近年は、IVHよりもTPNの言い方を用いる方向になって
きています。生命活動に必要な五大栄養素である炭水化物、タンパク質、
アミノ酸、脂質、ミネラル、ビタミンの他、糖質、電解質(Na,K,Cl,Mg,Ca,P)
微量元素等、一日に必要とする量を、中心静脈から24時間かけて一定の速度で
投与します。急速に投与すると高血糖になってしまうからです。

中心静脈に投与する理由は、心臓に近い太い血管なので血液量が多く血流も
早い為、糖濃度の高い、高カロリー輸液が投与できるからになります。逆に
高カロリー輸液であるTPNを抹消静脈から投与してしまうと、血管痛や静脈炎
を起こし、血管が閉塞してしまいます。

中心静脈の場合はカテーテルを長期間挿入していくのでカテーテル感染による
血管、血液感染により敗血性ショックを引き起こす場合があるので挿入部の
発赤、腫張、熱感、発熱の有無等には細心の注意が必要になります。

TPNは急に投与を開始したり、急にやめたりしてはいけません。慣らし期間が
必要で、血糖値等をみながら23日かけて徐々に投与量をあげていきます。
まず糖濃度の低いTPN基本液1(開始液)から始め、その後TPN基本液2(維持液)
を用いて投与していきます。離脱時も、体調をみながら投与量を徐々に落として
いきます。TPN投与を急にやめてしまうと、糖質の補給がなくなり低血糖を
起こす場合があります。

TPN離脱後は、抹消静脈栄養を併用しながら、経口栄養へと徐々に移行して
いきます。嚥下障害がある場合は、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあるので、
経口栄養に移行する場合の判断は慎重にしていかなければなりません。
 

【水・電解質輸液】

輸液の目的には「水・電解質の補給」「栄養の補給」「血管の確保」「病態
の治療」等がありますが、最も重要な輸液は「水・電解質の補給」になり、
体液を正常な状態に保つことになります。

私たちは水を飲み、食事を通して水分や電解質(イオン)を摂取していて、
ほぼ同量の量を体外に排泄することによって体内バランスを保っています。
このように体内の水分量や電解質の濃度を一定に保つことを「ホメオスタシス」
(
体の恒常性)と言い、生命活動に不可欠なものになります。この恒常性が崩れて
しまった時に、水分や電解質を含む輸液剤を点滴し補給することで、体内の
(体液)のバランスを整えていきます。

※電解質は細胞の浸透圧を調整したり、筋肉細胞や神経細胞の働きに関わったり等、
身体
にとって重要な役割を果たしています。

※体液とは・・・私たちの体の約60%は水分で、残りの40%はたんぱく質、脂質、
 無機質等の固形成分から構成されています。体内の中の水分成分を体液と呼び、
 血液、組織液(間質液)、リンパ液の3つに分類されます。体液は生体内にある
 液体成分の総称で、細胞膜を介して細胞内液と細胞外液に大別されます。
 細胞外液は毛細血管壁を介して組織液、血漿(けっしょう)、リンパ液、
 脳脊髄液等に分けられます。細胞外液は循環血液量を維持し、栄養素や酸素を
 運搬したり、老廃物や炭酸ガスを細胞外へ排出する役割をしています。
                      

                            日本伝承医学リハビリテーション科