舌疾患と心臓との関係について 2018.10.17. 有本政治


日本伝承医学は日本の古代人が開発した、世界で唯一「骨髄」の機能を発現させ
ることのできる技術になります。骨髄という器官は、血液(赤血球、白血球、血小板)
を作り出す場所になります。また骨髄には細胞の基になる“幹細胞”(かんさいぼう)
が一番多く存在し、骨髄機能が発現すると、幹細胞の働きが活発になり、細胞新生
を促します。このように骨髄機能が向上する事で、生命力の源泉となる細胞新生が
活発になり、造血により赤血球、白血球、血小板が増産され、自身の低下した生命
力や免疫力を高める事ができます。

病気は局所だけの問題だけではなく、全ての病気や症状の根底には、必ず自身の
生命力と免疫力の低下が存在しています。この低下した生命力と免疫力を元に戻
すためには、骨髄の機能を高める事で一番効率よく確実に達成できるのです。
真に病気の回復を目指すには、骨髄へのアプローチが有効になります。

また病気や症状の背景には、直接的な要因として、人体の全ての組織器官を養っ
ている全身の血液の循環・配分・質(赤血球の連鎖、赤血球の変形等)の乱れが
存在します。病気の進行を止め、回復に向かわせるためには、この三要因の乱れ
を元に戻す事が不可欠になります。

つまり病状の進行を止め、病気を根底から治すためには、低下した生命力と免疫
力を高め、全身の血液の循環・配分・質の乱れを元に戻す事が必要ということにな
ります。病名の如何に関わらず、病気を必ず回復の方向に向かわせることができ
るのです。これを可能にできるのが日本伝承医学の治療技術になります。以下日
本伝承医学の観点から舌疾患(口内炎、舌がん等)と心臓との関連を説明していき
ます。


『全ての病気や症状には意味がある』

現代医学に於いては、病気や症状は全て一方的に悪という捉え方がされていますが、
宇宙や自然、人生の様々な法則に照らしても、物事に一方的な事は存在しません。
表があれば必ず裏もあります。このように物事には必ず正反二面が存在します。
現代医学に於ける、症状が一方的に悪という捉え方は明らかに無理があります。
負の対応としてしか捉えられていない事に問題があるのです。

病気や症状を正の対応の視点で捉え直す事で、真の病気の本質が明らかになり
ます。この視点で病気や症状をみていくと、命を守るための必要な対応の側面が
明らかになってきます。日本伝承医学はこの視点で全ての病気を捉え直していま
す。ガンに対しては命を守る最終的対応として捉えています(詳細は拙著、「がんを
捉えなおす」を参照)。


『舌に現われる症状は、心臓の熱のこもりを抜く対応として発生している』

東洋医学では、「心は血脈を主り、その華は面にあり、舌に開竅(かいきょう)する」
と表現され、心臓は血液の脈動を主り、心臓の反応は顔が赤くなり、舌に現われる
と教えています。今回のテーマであります「舌」の症状とは、具体的には舌に炎症や
痛み、赤い斑点状の皮膚病、潰瘍が現われます。特に潰瘍性の舌炎は激痛を伴い、
脳に響く様な痛みが発生します。激痛を起こす事で、脳幹(基本的生命維持機構に
指令を出す場所)と心臓を刺激し、心拍を高め、心臓機能を活発にし、脳と心臓へ
血液を供給する対応をとるのです。

こうした舌に現われる症状は、全て心臓に発生した熱を表に抜く対応として発生して
います。生命維持に重要な役割をもつ心臓に熱が発生したり炎症をもつ事は、心臓
に心炎や心膜炎を発症させ、命に関わる事態を招きます。これを防ぐ対応として熱
を速やかに排出できる場所が舌になります。

毛に覆われた犬が、夏の暑い日に体内の熱を冷ますために口を大きく開けて舌を
出して、ゼイゼイ呼吸する事で熱を逃がしている姿を目にしますが、これも心臓の
熱を排出し、命を守る必要な対応をしているのです。舌を気化熱で冷ます事で心臓
の熱や体内の熱のこもりを速やかに下げています。

このように舌に起こる全ての反応は、心臓の熱のこもりと密接に関係しているのです。
故に舌に現われる症状を悪い対応として、口内炎等の初期の段階で、副腎皮質系
の塗薬等で封じ込めてしまうと、体は熱の排出先を失い、さらなる対応としてより重
篤な段階、潰瘍性舌炎等に移行し、最終対応としてがんに移行してしまう事になる
のです。


『舌疾患を回復させるには低下した心臓機能を高める事が不可欠となる』

心臓に熱や炎症が発生するという事は、心臓が過度に動かされている事を意味し
ます。通常心臓は死の瞬間まで休まず働く臓器故に、熱が発生しない様に、熱の
こもりが起こらない様に、熱を除去排出できるシステムを備えています。しかし遺伝
的に心臓や肺の機能が弱い心肺機能低下体質の人は、常に心臓に負担がかかる
ために、心臓の機能が低下しやすくなります。心臓機能の低下は即、命に直結する
ために、心臓を活発に動かす対応を迫られるのです。

命を守る対応ではありますが、過度に動かされる状態が長期に及ぶと、次第に心臓
に熱が蓄積していくことになります。さらに体は、機能低下した臓器を元に戻す対応
として、一時的に熱を発生させる事で機能の回復を図ります。この状態が相まって
心臓に熱のこもりと軽い炎症が起こるのです。

心臓の熱のこもりを回避する対応として初めに、心臓周辺の上半身や首、顔、頭
に汗をかくことで、気化熱によって冷まそうとします。これが心臓疾患の人が暑が
る理由になります。この発生した熱を発汗等の通常の手段で棄てる事ができなくな
った時の必要対応が、舌に炎症や腫れや潰瘍を作ることで心の熱を抜く対応を迫
られるのです。これが舌疾患の根拠と機序になります。故に舌の症状を回復させる
ためには、低下した心臓の機能を元に戻す事が不可欠となります。


『心臓機能を元に戻すにはどうすれば良いかーーー心臓の虚血を補う』

心臓機能低下を起こす人は、遺伝的に心肺機能の弱い体質をもっています。
遺伝的体質を変える事は至難になりますが、心臓に熱のこもりが起きなくする事は
十分に可能です。
心臓だけでなく全ての組織器官の機能低下の背景には、必ず命の源となる血液の
供給不足(虚血)が存在します。例えば、心臓の症状である動悸や狭心症、心筋梗
塞は、根本的な原因は心臓の虚血に起因しています。

動悸は、心臓に血液の還りが悪いのを、一時的に血液が溜まるの待って、血液を
溜めて一気に流す対応になります。通常なら心臓の拍動を感じないのですが、心臓
機能が低下している時は、血液を溜めて一気に噴出させるために、ドドッとした動悸
を感じるのです。つまり動悸は、不正な拍動ではなく、必要な“調整脈”として捉える
事が大切です。

また心臓を締め付ける狭心症や心筋梗塞は、心臓自体の虚血を補うために、周囲
から血液を吸い取ろうとし(スポンジ効果)、心筋を痙攣(けいれん)させて、心臓に血
液を集める対応をとっています。動悸や狭心症、心筋梗塞は、生きている体を死な
せる反応ではなく、最後まで命を守るための防衛対応手段として発生させているの
です。

これまで心臓の症状を一方的に悪の反応としてしか見てこなかったために、その
本質が見失われたのです。心筋梗塞の原因とされる、心臓の心筋を作動させてい
る冠状動脈の狭窄も、実は冠状動脈の脈管を故意に細くする事で、内部の血液の
流れを速くし、心筋に血液を速く送り込み、心臓の拍動を守る必要な対応だったの
です。生きている体はここまでしても命を守る対応をとっていくのです。生物として生
まれて、その生を全うするための防衛手段は幾重にも完璧に備えているのは当然
と言えます(詳細はホームページ院長の日記、心臓疾患の項を参照)。

このように心臓疾患を根本的に回復に向かわせるためには、心臓にいかに血液を
供給し心臓の虚血を取り除くかが命題になります。心臓に虚血を起こす要因は、全
身の血液の循環が乱れ、、血液の配分が乱れ、血液の質(赤血球の連鎖と変形)が
悪くなる事で、全身の毛細血管内の流れに詰まりや停滞が生じ、心臓に血液が早く
供給できなくなる事が原因になります。つまり全身の血液の循環・配分・質の三態の
乱れを早急に修正する事が求められます。


『全身の血液の循環・配分・質が乱れるのは何が起因しているのか』

血液の循環に関わるのは、心臓のポンプ力になります。この血液を押し出す力が
弱れば血液の循環は乱れます。心臓ポンプの弱りは遺伝的に心肺機能低下体質
と、心臓や呼吸器に調整指令を出す脳の中心に存在する脳幹部(のうかんぶ)の機
能低下が関わっています。脳幹部の熱のこもりや脳圧の上昇が脳幹部の機能を低
下させるのです。これが血液の循環を乱す大きな要因となります。また送り出した血
液を心臓まで還す力と量(下肢の筋肉ポンプ作用)が低いと心臓に十分な血液量が
戻らず、全身に送り出す血液が少なくなり、血液の循環の乱れを作り出します。

次に全身の血液の配分が乱れる原因は、大量に血液を消費する箇所があったり、
血液を大量に集め、充血を起こしている場所があるという事です。常に大量の血液
を消費する場所は脳になります。そして大量に充血を起こす場所は血の固まった
様な臓器の肝臓になります(肝臓は通常でも全身の血液の4分1が集まっています)。

次に血液の質(赤血球の連鎖=ドロドロでベタベタな血液と赤血球の形の変形)の
乱れは、血液が熱を帯びる事で起こる“熱変性”が直接的な原因となります。血液の
熱を上昇させるのは、全身の血液の熱を一定に保つ作用を担う胆汁(たんじゅう)の
分泌不足になります。胆嚢(たんのう)から分泌される極めて苦い成分の胆汁は、体
の中で作り出される漢方薬(苦寒薬)の作用を担っていて、血液の熱を一定に保つ抗
炎症作用の働きがあるのです(詳細はホームページ院長日記の肝臓胆嚢の項参照)。
胆汁の分泌不足が“血熱”を生み、赤血球の連鎖と変形をもたらす最大要因となる
のです。正に「肝心要」(かんじんかなめ)とはこの事で、肝臓(胆嚢を含む)と心臓が
大きく関わり、さらに脳幹の熱のこもりと下肢の筋肉ポンプ作用の低下が、全身の
血液の循環・配分・質の乱れの最大要因となり、これらが心臓に虚血を引き起こし
ていくのです。


『心臓の虚血の根拠と機序が明らかになればどう対処すべきかの答えは出てくる』

これまで舌と心臓の関わりを詳細に解説してきましたが、舌の症状の根拠と機序と、
心臓の虚血の原因が明らかになれば、どう対処すれば良いかの答えは出てきます。
病気や症状を根本的に回復に向かわせるためには、病の背景に存在するその人
自身の生命力と免疫力の低下を元に戻し、直接的要因となる全身の血液の循環・
配分・質の乱れを正す事が不可欠となるのです。

全ての病気や症状の背景にはその人自身の生命力と免疫力の低下が必ず存在
しています。この生命力と免疫力を元に戻すためには、生命力や免疫力とは何か
を具体的に知る事が必要です。生命力とは、細胞新生力のことで、生命の最小単
位となる細胞を活性化させ、細胞新生を促す事です。免疫力とは造血力のことをさ
します。血液成分を担っている赤血球、白血球、血小板が正常に働き、その中でも
特に白血球が免疫の主体となります。造血力が高まることで免疫力は回復できるの
です。
この細胞新生と造血は全て人体の中心の『骨髄』(こつずい)が担っており、この骨
髄の機能を発現させる事が生命力と免疫力を高める上で重要となるのです。これ
を達成できるのが日本に古代から伝承されてきた日本伝承医学の治療になります。

そして、次に病気の直接的要因となる全身の血液の循環・配分・質の乱れに関与す
る肝臓、胆のう、心臓の機能を高めることが必要になります。日本伝承医学では、
肝臓と胆のうの熱や腫れ、充血をとる方法として、日本の古代人が開発した右大腿
骨叩打法を使用します。この技法は、肝臓、胆のうの熱と腫れ、充血を改善できる
優れた方法になります。次に心臓に関しては、これも古代日本人の開発した「心臓
調整法」が心臓機能を回復させます。これにより“肝心要”の機能回復が図られ全
身の血液の循環・配分・質の乱れを元に戻すことができるのです(技法の詳細は、
拙著日本伝承医学実技編参照)。


『全身の血液の循環・配分・質を改善させるために
                家庭療法として推奨する頭と肝胆冷却法の意味』

頭の中心に位置する「脳幹」は、別名“命の座”とよばれ、基本的生命維持機構に
指令を出す中枢の役割を担っています。生命維持機構とは、生命を維持する上で
不可欠な呼吸中枢、心拍、体温、自律神経、ホルモン、性腺刺激ホルモン、情緒の
安定作用等になります。これらの生命維持に不可欠な中枢の働きが活発になれば、
当然すべての病気治しの起点となり、確実に回復へと向かわせることができます。

この脳幹部の機能を低下させる最大の要因が、熱のこもりと脳圧の上昇になります。
古代の日本人は、この事実を既につかんでいて、すべての病気治しにおいて、冷た
い水手ぬぐいを病人のひたいに当てて、ひたいを冷却することで、この脳幹の熱の
こもりを除去する方法を用いていたのです。このひたい冷却法は日本独自のもので
外国では行なわれていません。

特に脳幹の生命維持機構への指令の中で、呼吸中枢と心拍中枢は、その名の通
り、生命維持に一番重要な呼吸(肺)と心拍(心臓)をコントロールする場所となります。
この呼吸と心拍機能が正常に働くということは新鮮な酸素を充分に含んだ血液を、
体の隅々まで届けられ、血液の循環を大きく変える最大の起点となるのです。
これが頭(脳幹)の冷却法のもつ意味なのです。

次に肝臓と胆のうは、既に解説したように全身の血液の配分と質(赤血球の連鎖と
変形)に一番関わっている臓器になります。冷却により肝臓の熱と腫れ、充血がとれ
ることで、全身の血液の配分を修正できて、心臓に血液が集まりやすくなるのです。
同時に胆のうの袋の腫れがとれることで、胆のうの収縮作用が正常に戻り、胆汁の
分泌が促進され、“血熱”が除去されることで、赤血球の連鎖(ドロドロでベタベタな
血液)と変形が解消されるのです。これにより全身の毛細血管の流れが改善され、
心臓に血液が早く還ってくることになり、心臓の虚血が回復できるのです。当院が
“必修科目”としている頭と肝胆冷却法は以上の意味があるのです。


『心臓の虚血を改善するためのつま先立ちと腕立て伏せの意味』

心臓のポンプ作用は、血液を押し出す作用であり、心臓に還る血液を吸い上げる
ポンプ作用はありません。全身に噴出した血液が、心臓まで還るためには手足の
ポンプ作用がその役を担っています。手足のポンプ作用とは上肢、下肢の筋肉を
使った「形状ポンプ(ハート型)」がその役割を果たしています。上肢と下肢の筋肉ポ
ンプが作動することで、心臓に血液を還しているのです。
しかし、四つ足動物から二足直立を果たした人類は、4本あるポンプ機構から下肢
2本のポンプ機構に頼ることになったのです。つまり、四つ足動物に比べて心臓まで
還る血液ポンプ装置が半減し、構造的弱点を背負うことになったのです。

上肢と下肢のポンプ機構は、地面に接することで重力圧が手足の関節と筋肉にか
かることでポンプ装置が作動するように構成されています。下肢のポンプ機構しか
使えなくなった人類は、四つ足動物の下肢に比較すると、筋肉量を膨大に増やす
ことで、これを補う対応をしています。その中でも、足関節と連動したふくらはぎの
筋肉が心臓に血液を還す筋肉ポンプの主役をなしているのです。つまり“つま先立
ち”をすることで足関節とふくらはぎのポンプ装置が起動するように作られています。
この「つま先立ち」の筋力が低下すると心臓までの血液の還りが弱くなってしまうの
です。

これが心臓の虚血を生む要因となるのです。このふくらはぎの筋肉の弱りを防ぐの
が当院が薦める「つま先立ち」の意味になります。やり方は、肩幅に開いた立位か
らめいっぱいにつま先立ちをし、そのまま10秒保持します。これを1セットとして連続
10セットできる筋力を一生涯維持することが求められます。また、つま先立ちは、歯
磨きの時や調理の時等、日常生活の中にとり入れ、毎日継続して実践することが
大事です。

次に上肢のポンプ力を回復するのが「腕立て伏せ」になります。二足直立歩行に移
行した人類は上肢のポンプ機構を失ってしまったのですが、上肢の各関節の手、肘、
肩に重力圧がかかることで上肢の筋肉ポンプを作動させることができます。
腕立て伏せの要点は四つ足動物と同じように上肢に地面からの「重力圧」が体幹
にかかることです。“重力圧”がかからなくなると関節、筋肉、骨が劣化してしまいま
す。これは無重力空間で過ごす宇宙飛行士達が証明しています。つまり上肢のす
べての関節に重力圧をかけることができるのが、腕立て伏せになります(詳細はつ
ま先立ちと腕立ての項を参照)。手・足のポンプ機構が充分に機能することで、心臓
まで血液を還し、心臓の虚血を防止できるのです。

もうひとつ家庭療法として大事なことは「水の摂取」になります。常温の水を1日1.5
~2リットル位飲むことで、血液の質が良くなります。このような総合的な治療法に
より、舌の疾患を回復に向かわせることができるのです。また再発を防止できます。
全ての病気や症状には自身の遺伝的な体質を基盤に、長い間の生活習慣の乱れ
と病気へのとり組み方の認識違いが存在します。病気を改善していくためには、
病気に対する正しい認識と、自身の意識改革が必要となります。