天の気としての電気・磁気  2018.5.4. 有本政治

 *これは今から約30年前の文章に加筆したものになります

 これまでは生体電気を中心に骨との関係を述べてきましたが、この項より
「磁気」を含めて骨とのつながりを総合的に考察してみたいと思います。

地球生物が「天の気」「地の気」を受けて誕生したことは、いうまでもありません。
天の気、地の気というのは漢方的な表現になります。この間に「人(生物)」を
入れて「天-人-地」の三才の関係といいます。つまり人(生物)は、天の気・
地の気を受けて誕生し、その影響下にさらされ生きている存在ということです。
天の気・地の気を受けることで生命を維持できているのです。難しい問題では
なく、天から空気(酸素)と太陽、地から土や水、食料を得なければ当然生存で
きないのです。それでは、天の気・地の気とはどういうものか考察してみましょう。

 天と地は対立する概念で、「天地の開きがある」と表現するように“両極”を表
わしています。相反する二つの気を意味しています。これは言い換えれば、
“極性”を有しているということです。漢方的にいえば「陰・陽」(いん・よう)という
概念です。陰気(地の気)は昇り、陽気(天の気)は降りる性質をもっています。
また、「極性をもつ」ものの身近な代表には、電気と磁気があげられます。電気
はプラス極とマイナス極の二極をもち、磁気もN極とS極という相反する二極を
もっています。天の気、地の気に上記の電気・磁気の要素をあてはめて、総合
的に、「天の気」と人体との関連を考察してみます。

 「天の気」とは、“天気”という言葉に代表されるように、様々な気候的要素を
含んだものです。その中でも、天から照らし注ぐ太陽の光や熱は、地球環境を
支配し、地球生物を育んだ代表的な天の気です。その他、地に降りるものは
雨・雪・アラレ等も天から地に降りるものになります。これは誰でもが知ってい
る天の気です。漢方の陰陽概念の陽気は下る(地に降りそそぐ)に一致してい
ます。もっと別の視点から天の気を考えてみますと、地球上空に存在する電界
層があげられます。これは静電気を指し、地面と上空の電離層との間に存在
しています。

大気中の電気の例の代表が雷(カミナリ)です。雷は雲と雲との間、雲と地面
との間に起こる自然の火花放電現象を指しています。地表から約100km上空
までを自然電界と呼んでいます。これも天の気に含まれます。この電界の電気
の強さが生物が生きていく上でなくてはならない「気」となるのです。この電気レ
ベルを測定してみると、メートル当たり数百ボルトの値を示すことがわかってい
ます。生物は、この電位の中に身を置いてさらされているのです。また、この電
気レベルに順応し、生命を維持しています。これを完全に遮断した場合、生物
は体温の変化、睡眠サイクル、そして様々な身体機能に障害を起こすのです。
特に人体の情報系としての脳内ホルモン、脳内物質の生産・分泌に影響を及
ぼすと言われています。

 文明国に暮らす現代人は、まるで“ファラデーの実験箱”(絶縁体ではなく、電
気を通す導体でできた箱)のような環境の中で暮らしています。鉄骨を組んで
造られたビルの中で生活したり、働いたりし、金属でできた車に乗り、腕時計や
ネックレス、イヤリングを身につけ、網の目のように張り巡らされた送電線の下
で生活し、金属でできた家電製品や生活用具に囲まれ、自然電界から隔離さ
れた暮らしの中にいます。このような人工の箱の中に住むということは、体調
に変調を起こさない方が不思議なくらいです。つまり“電気”という「天の気」を
受けないで暮らしているのです。

 次に「天の気」としての“磁気”について考察してみます。天から降り注ぐ磁気
に関しては太陽からだけではなく、様々な惑星が関与しています。まとめれば
宇宙磁気と呼ばれるものです。惑星の磁気に関しては、科学技術の進歩に伴
い探査ロケットで確認されています。太陽系惑星の中で水星・地球・木星・土星・
天王星・海王星です。この中で一番磁気を放出しているのは、言わずと知れた
太陽であり、その次に地球、そして木星型の惑星であることがわかってきました。
当然、地球の周りにはある方向性をもった磁界が存在していることは周知の
通りです。この地球をとり巻く磁界層が地球磁気圏を形成し、このカプセルの
おかげで太陽からのプラズマ風(太陽風)を防御してくれているのです。

 また逆に恒常的な磁気のレベルが、地球生物の生命活動に不可欠な力と
なっているのです。例えば人間の脳の中にあるホルモンの中枢である松果体
(しょうかたい)は、0.5ガウス程の地球磁気圏の磁場の変化によってホルモン
の分泌量を変化させることが知られています。それらのホルモンは体内の生
命活動のコントロールを含む様々な形で神経系の活動を左右しています。
これもいわゆる天の気を形成している磁気の作用です。

 また、太陽にはよく知られている黒点(こくてん)というものが存在します。
これは太陽の中の磁極だといわれています。黒点は、太陽のもつ一般磁場
よりはるかに強い2,0003,000ガウスという磁性を有しているといわれてい
ます。この太陽の黒点活動が地球環境、地球生物の活動に絶大な影響を与
えているということが最近明らかになってきました。この活動の周期が、11
12年周期であることはよく知られています。

この周期を応用したものが、古代中国に起源をもつ十干十二支の干支の
周期なのです。12年周期で変化を説明しています。

竹の花が60年に一度咲くのもこれに関わっています。このように古代人は、
太陽の黒点周期を知ることで、天文、暦(こよみ)、農業の指針、生活の指針、
また物事の吉凶を占い、健康の指針、病気治しとして活用していたのです。

太陽から地球までの距離は約一億五千万kmも離れていますが、その太陽磁
場が瞬時のうちに地球に及ぶのですからまさに驚くべきことです。これも「天
の気」の作用の一部です。

 このように地球をとり巻く電界層・磁界層は、地球生物にとって不可欠な電
気・磁気として作用を及ぼしています。ましてや宇宙規模での宇宙電気・磁気
作用は、現代科学の観測のレベルではまだ確証が得られていない状況です
が、古代人の到達した叡智の中の易学、西洋占星術の中に見られる様々な
「星」の影響力は、人間の健康状態、気質、性格等に深く関わり、洋の東西を
問わず語られています。宇宙の一構成員である地球生物が、宇宙の電気・磁
気作用の影響を受けるのは充分にうなずけることであります。

 つまり、天の気としての電気・磁気は、私たちの生命活動に深く関わり、人
体内の電気・磁気と密接に関わりながら、私たちの生命を育んでいるのです。

この天の気と人体内の電気・磁気との調和と過不足を補うことを目的に日本
伝承医学の技術は、構築されています。日本伝承医学の技法は、この天の気
を治療家の体を介して増幅し、“テラシソソグ”技法でもあるのです。これを日本
の古代人は「アマウツシ」と呼んでいます。日本の古代人の開発した“アマウ
ツシ”の方法を具体的に技法化したものが、日本伝承医学の技術になります。